11月9日、福岡で、「帯津良一『場』の養生塾」塾頭として、がんと共に生きる人々たちへ希望と生きるエネルギーを伝え続ける帯津良一氏の「博多養生塾」が、NPO法人日本ホリスティック医学協会福岡事務局の主催で開催された。講演「いのちのエネルギーを高める養生とは」と「呼吸法の実践」の2部構成で行なわれたなかで、「今後、年に1度は、貝原益軒の『養生訓』発祥の地である博多で養生塾を行なっていく」と語った帯津氏が、統合医療をどのように考え、人々に何を伝えようとしているのか紹介する。
帯津氏は、講演の冒頭で「30年近くホリスティックな健康観を求めて活動を行なってきたが、まだ自分が理想とするものを捉えていない」と語った。帯津氏は、日本にホリスティック医学協会が発足する以前から、ホリスティック観による医療のあり方を察し、自身の病院で西洋医学に中国医学を加えた中西医結合によるがん治療に従事する第一人者として知られている。
ホリスティック医学の基本的姿勢には、西洋医学と伝統医学、各種代替療法が互いに補完し合うという前提がある。しかし病気の治療を、身体における疾病部分の修復や除去と捉える西洋医学と、身体だけではなく、心のあり方、気の流れ、そして死生観も含めて行なう伝統医学や各種代替療法は、あり方が根本的に異なる。ゆえにうまく補完しあえれば理想的な医療となりうるが、日本の健康保険制度では、保険診療と自由診療を併用する混合診療は原則として認められないという、法的な問題がある。しかし既報のとおり、統合医療として推進していこうという動きは、行政レベルで始まっている。
帯津氏は、帯津三敬病院名誉院長であり、多数のがん患者を治療する西洋医学の医学博士として活躍する一方、養生塾では気功や太極拳などを用いてホリスティックな健康法を伝えている。
帯津氏は、「ホリスティック医学は、どうしても死後を含めて患者さんと向き合うという時間枠を超えた姿勢が必要になります。環境問題など、人類、地球レベルでの問題を考えることもあります。病院内だけで行なうのはとても難しい。だから病院外で実践することにしたのです」と、養生塾を始めた経緯を語る。
「一時は病院を畳み、ホリスティック医学に専念することも考えたが、病院のスタッフのことを考えると、己一人の問題として考えることもできず、病院外で塾を開くことにした」という。
そこまでして養生塾を開くのは、ひとえに死に怯える人々が、気功や太極拳によって生命力を帯びた表情に変わる様を見て、西洋医学的な治療以外の医学、療法に、人を芯から健康に導く「いのちのエネルギー」への道があり、それが地球全体を健やかに変えていくと確信したからだ。
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【ホリスティック医学の定義】
1. ホリスティック(全的)な健康観に立脚する
人間を「体・心・気・霊性」等の有機的統合体ととらえ、社会・自然・宇宙との調和にもとづく包括的、全体的な健康観に立脚する。
2. 自然治癒力を癒しの原点におく
生命が本来、自らのものとしてもっている「自然治癒力」を癒しの原点におき、この自然治癒力を高め、増強することを治療の基本とする。
3. 患者が自ら癒し、治療者は援助する
病気を癒す中心は患者であり、治療者はあくまでも援助者である。治療よりも養生、他者療法よりも自己療法が基本であり、ライフスタイルを改善して患者自身が「自ら癒す」姿勢が治療の基本となる。
4. 様々な治療法を選択・統合し、最も適切な治療を行う
西洋医学の利点を生かしながら中国医学やインド医学など各国の伝統医学、心理療法、自然療法、栄養療法、手技療法、運動療法、などの各種代替療法を総合的、体系的に選択・統合し、最も適切な治療を行う。
5. 病の深い意味に気づき自己実現をめざす
病気や障害、老い、死といったものを単に否定的にとらえるのでなく、むしろその深い意味に気づき、生と死のプロセスの中で、より深い充足感のある自己実現をたえずめざしていく。
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