エネルギー政策においては、あやうい面々の多い安倍政権。2011年3月の福島原発事故以降、多くの人が原発のない社会の実現を望むようになったが、政権のエネルギー政策にその声は反映されていない。舩橋晴俊法政大学社会学部教授らにより結成された市民シンクタンクの原子力市民委員会などが、国民の声を反映させた政策を提言するために、シンポジウムや意見交換会を開催している。今、いかに民意を政治に反映させるかが問われている。
<「国民の声」軽視で原発推進>
エネルギーの今後について、国民的に議論する場は必要だ。「エネルギー基本計画」の見直しがヤマ場を迎えており、経産省に設置されている「基本政策分科会」の中で、原子力を重要な電源と位置づける方向性が打ち出されている。この方向性に、民意は反映されているのかどうか。12年夏に国民的な議論を経て、出された世論やアンケート結果などを考えると、エネルギー政策においては、民意軽視と受け取れる。もっと大々的に議論を交わしたうえで、エネルギー政策の今後を決定すべきなのではないか。
安倍政権は、12年12月の発足後、民主党政権下で閣議決定された原発ゼロを目指すという方針を、ゼロベースで見直すと表明。11年3月の福島原発事故後の議論、12年夏に行なわれた「国民的議論」で出された国民の意見を軽視し、現在は、トルコなど海外へ原発を輸出するなど、首相が積極的に原発をトップセールスしている。年内に行なわれるのではないかと目されている「エネルギー基本計画」の見直しも、国民の目に入らぬ、閉じられた場で改定作業が進む。
<世論をくみ取るシステムづくり必要>
本来は、国民の声の結集であるべき「政策」。日本の構造上の問題点として、政策に、大企業や団体などの声ばかり届き、国民の声が反映されにくいという点が挙げられる。長期的な視点で日本を見た場合、エネルギー政策だけでなく、世論(公論=国民の意見)を政治に届けやすくするシステムづくりに今、着手する必要性が生じている。
12年の民主党政権下で、今後のエネルギー・環境政策について、意見聴取会など国民的議論が交わされ、約8万9,000件のパブリックコメントが寄せられた。その意見聴取会での意見やパブリックコメントの中の約87%が、中~長期的に原発ゼロを選んでいた(原発即ゼロは約78%)。
12年9月14日に「革新的エネルギー・環境戦略」が民主党政権下の閣議で話し合われ、2030年代に原発稼働ゼロが可能となるよう、あらゆる政策資源を投入することが決められた。
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