約1年後に予定されている任期満了にともなう福岡市長選へ向けて、現職・高島宗一郎氏の動きが表面化する。高島氏は近日中に、同選挙における推薦願いをもって市議会各会派を回る予定であることが、市政関係者への取材でわかった。市議会各会派では、就任から今までの3年間における高島氏の市長としての取り組みをふまえて判断することになる。
注目は、前回の市長選で高島氏を擁立した自民党市議団。なかなか候補者を決められず、「不戦敗」になりかけたところで現れたピンチヒッターが高島氏。かねてから政界進出に色気を持っていたが、そもそも国政志望で、福岡市長は考えてもいなかった。立候補表明にあたって、民放アナとして出演していたレギュラー番組から突然姿を消したドタバタ劇が、市長選出馬が突然持ち上がったことを物語る。
福岡での知名度はあっても全国的には無名であった高島氏に、当初、自民党本部の対応は冷ややかなものだった。前回の市長選において、最終的には自民党のカラーが強かった高島氏だが、同党の推薦は受けていない。しかし、担いだ以上、選挙戦の準備は、長老2人を中心に自民党市議団が全面協力。朝の駅前に自民党市議団が勢揃いし、高島氏とともにビラを配ったことさえあった。
自民党本部の態度が変わったのは、選挙戦が間近になってから。地元での知名度の高さから、高島氏優勢が予測されはじめた。まだ、政権交代の余波が残る2010年のことである。民主党推薦の現職に勝つ可能性があるとなれば、自民党が躍起にならぬはずがなかった。高島氏の自民党色を強めるため、当時の総裁や三役が日替わりで福岡入り。なかでも麻生太郎氏(現副総理)は、我が子のように高島氏を寵愛。そして、高島氏は、生みの親ではなく育ての親を選んだ。
与党会派でありながらも、自民党市議団は、高島氏に心中複雑なところがある。議会中の高級フィットネス利用では高島氏をかばい、非公開の場での経緯説明で野党会派の矛を収めさせたが、当の本人はその翌日に水着姿で開き直った。中央保育園移転問題では市民から告発され、高島氏のリコールを始めようという声も高まっている。次期市長選における推薦について、某市議は「会派内で議論にすらなっていない」という。はたして、"生みの親"は、高島氏のアプローチをどう受け止めるのだろうか。高島氏擁立の立役者であった長老2人も今はいない。
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