<政権交代後に方針転換>
昨年末の衆院選を経て、政権は自民党に移った。7月に行なわれた参院選でも、国民は自民党を選んだが、エネルギー政策に関しては、ある程度、「脱原発」を実現したいという意見が、国民全体の底にあり、政権交代したとはいえ、今も、この底にある国民の声は2012年の「国民的議論」の時のものと、さほど大きくは変わっていないはずだ。
昨年末の衆院選、7月の参院選では、主に、自民党、安倍政権の経済政策を支持する人が多かったため、自民党の勝利に終わったが、エネルギー政策においては、自民党に全面的な支持が入ったとは思えない。
政策ごとに政党や候補者を細かく選ぶことができず、国民の意見をすべてにおいては反映することができない選挙制度の欠点が出たと言えるだろう。
現政権は、エネルギー政策に関して方針転換するのであれば、国民に再確認するか、なぜ転換するのか、丁寧な説明をしなければならない。原発をこのまま維持し、トルコなどの海外に原発を輸出するのであれば、なぜ、原発推進に舵を切るのか、もっと公の場で、明確に国民に問いかけ、意見を吸い上げる努力があっていいのではないか。
<国民的に話し合う場が必要>
オープンな場での議論も必要だろう。原発推進派の政治家、官僚や専門家と、それに反対する立場の政治家、官僚、専門家などの間で、国民の目に見える場で議論がなされていい。まだオープンな場での大々的な議論はされていない。
討議型の世論調査など、国民参加型の議論の場も不足している。経産省での審議会などが開かれているが、政権交代後、脱原発派の委員を退任させ、原子力ムラの委員を復権させる結果になった。経産省の設置した「基本政策分科会」での議論は、委員の人選などにも問題があり、世論とは、ややズレている。
環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は、「審議会での議論は、福島の話も出てこないし、リアリティからかけ離れている。福島原発事故に何を学んだのか?その危機を見て、議論をしていない。審議会での議論は、その特徴として、現実感と危機感が欠落してしまっている」と、政策決定に影響を及ぼす審議会の中身をより充実させ、現実に即した議論が交わされるべきとの見方を示した。
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