朝倉スイゼンジノリの養殖業者の廃業危機が報道されている。11月1日をもって、水源となる地下水汲み上げポンプを停止する予定だったが、朝倉市への陳情が実を結び、年内は市が経費を負担してくれることになった。一方でスイゼンジノリの窮状が報道され、注目を集めるようになった「サクラン」。スイゼンジノリから抽出される同物質はヒアルロン酸以上の保水力を持ち、さらに抗炎症効果も確認されている。熊本発祥のスイゼンジノリをビジネス化し、種の保存、地域の活性化を目指す金子氏に聞いた。
――御社では、どのような事業を行なっていますか。
金子慎一郎氏(以下、金子) サクラン生産から供給までのコーディネートをしています。具体的にはスイゼンジノリを生産者から仕入れて、委託工場にサクランを抽出してもらい、それを化粧品メーカーなどに卸しています。ようやく今年の春ごろから当社製のサクランが出荷できるようなりました。徐々に取引客も増えて、熊本ではリバテープ製薬(株)が熊本産スイゼンジノリのリソースに切り替える時期と重なり、取引が始まりました。
――なぜサクランをビジネスにしようと思ったのですか。
金子 実はサクランを発見したのが、私の姉だったんです。北陸先端科学技術大学院大学の金子麻衣子が2006年にサクランを発見しました。
生産量の減少に悩む朝倉の養殖業者が日本全国の研究者に向けてスイゼンジノリの存在を知らせるメールを送ったそうです。「伝承的に体によいと言われている素材があります。研究により明らかにしてくれませんか」と。たまたまそのメールを受け取ったのが、私の姉の上司でした。上司からの声かけがあったことと、郷土熊本発祥のスイゼンジノリ。姉が研究を始め、サクランを発見しました。姉はサクランをビジネスにしないかと大手企業に売り込んだそうですが、絶滅危惧種で供給に課題のあったスイゼンジノリに注目する人はいませんでした。そこで、私に声がかかり、起業したのです。
――実績のないスイゼンジノリをビジネスに。迷いはありませんでしたか。
金子 迷いはありませんでした。サクランの特性を聞いておもしろそうだと思ったことが何よりの原動力になっています。現在6年目になりますが、まったく畑違いのことを始めたので、当初はゼロからのスタートでした。製品化するまで非常に時間がかかりました。販売できる形になったのが、ようやく3年前からです。熊本県から補助金含めビジネスパートナーの紹介など支援を受けて、今に至ります。
昨年、サクラン研究会の新聞記事を見たリバテープ製薬(株)の社長様に興味を持って頂きました。偶然の出会いでした。リバテープ製薬に採用していただいてから、引きあいが増え、状況は好転しつつあります。今は少しずつ売上があがるようになった程度でまだまだこれからです。
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