NET-IBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、東京都の猪瀬直樹知事が徳洲会から献金を受領した件の真相追及を避けるメディアの姿勢について、過去、無実潔白の小沢一郎氏を検察・裁判所・メディアが結託して攻撃し失脚へ追い込んだ小沢一朗氏裁判事件を例に挙げ、有罪無罪が真実によって公平に裁かれない日本は暗黒国家だと批判する11月24日付の記事を紹介する。
東京都の猪瀬都知事が馬脚を現した。徳洲会から5,000万円の裏金を受領した疑いが濃厚になった。猪瀬氏は当初、メディアの取材に対して「まったく関知していない」と述べていたが、この発言を撤回し、議員会館で徳田毅議員から5,000万円を受け取ったことを認めた。
猪瀬氏は東京都知事選出馬に際して、徳洲会の徳田虎雄氏を訪問し、その直後に徳田氏サイドから5,000万円を受領した。徳洲会サイドでは、猪瀬氏から1億円の資金提供の要請があり、まず5,000万円を提供することになったとの内部文書が存在するとの報道が行なわれている。猪瀬氏は資金提供の要請をしていないと否定している。事実関係を正確に調査する必要があるが、猪瀬氏は東京都知事を辞任するべきであろう。
問題は、メディアの報道が生ぬるいこと。なぜ、「裏金受領疑惑」の見出しで報道しないのか。
また、元東京地検特捜部検事で、本年の参議院選挙に自民党公認で立候補して落選した若狭勝氏のコメントを報じている。若狭氏は、刑事事件として立件するためのハードルは高いことを強調し、猪瀬氏の刑事責任追及が難しいとの見解を示した。まだ、事実関係も明らかでない時点で、猪瀬氏の刑事責任追及が難しいとするコメントは、あまりに時期尚早である。また、自民党公認で参院選に出馬したばかりの人物にコメントを求めること自体が適正でない。
日本政治が転覆された主因は、2009年から2012年にかけて4年間継続された小沢一郎氏裁判事件であった。無実潔白の小沢一郎氏が人物破壊工作の標的とされ、検察・裁判所・メディアが結託して、小沢一郎氏が攻撃され続けた。
キーワードは「政治とカネ」であった。
小沢一郎氏裁判事件は三つの内容を有する。
西松事件
陸山会事件
小沢一郎氏裁判事件
である。
西松事件とは、新政治問題研究会、未来産業研究会が行なった政治献金を、小沢氏資金管理団体が事実通りに政治資金収支報告書に記載して提出したことが、「虚偽記載」とされた事案である。
20名近い国会議員資金管理団体が、まったく同じ事務処理をしたが、小沢氏の資金管理団体だけが摘発された。麻生政権の官房副長官であった漆間巌氏が、「この問題は自民党には波及しない」と発言して問題になった。
犯罪でも何でもない事実通りの収支報告書への記載が虚偽記載とされ、小沢氏秘書が突然逮捕された。2009年の決戦の総選挙を目前とするタイミングでの、このケースは、小沢一郎氏に対する政治謀略工作でしかなかった。現に、この事案を背景に、小沢一郎氏は5月11日に民主党代表を辞任する意向を表明した。この、西松政治謀略工作事案がなければ、2009年に小沢一郎政権が誕生していた。
日本政治を転覆させた政治謀略工作であった。
陸山会事件とは、西松事件が史上空前の政治謀略冤罪事案であることが明白になった時点で、検察が、さらに暴走を加速させて引き起こした、第二の政治謀略工作事案であった。
2004年10月から2005年1月にかけて、小沢氏資金管理団体が世田谷の不動産を取得した。
代金決済は2004年10月に行われたが、移転登記が行われたのは2005年1月だった。小沢氏資金管理団体は、2005年の取得として収支報告書に記載して届けた。検察は、2004年の収支報告書に記載すべきだったとして、これを「虚偽記載」だとして、小沢氏元秘書3名を逮捕した。
このなかには、現職衆議院議員だった石川知裕氏も含まれた。
3名の元秘書は、当然のことながら無実潔白であるが、東京地裁の登石郁朗判事、および、東京高裁の飯田喜信判事が、トンデモ判決を示し、秘書3名は有罪にされてしまった。小沢氏サイドが裏金を受領したと裁判所が認定してしまったのである。
事実が存在せず、証拠もないのに、裁判所が事実認定し、秘書3名が有罪にされた。これが西松事件である。石川知裕氏はいまも上告審で無実潔白を訴えている。検察は、小沢氏サイドに、裏金受領や受託収賄などの実質的犯罪が存在するとの「見込み」をもって、正当性のない不当逮捕を繰り返した。この不当逮捕を大義名分にして、強制捜査を繰り返し、「見込み」である実質的犯罪の発掘に全精力を注いだのである。しかし、実質的犯罪を発見することはできなかった。実質的に検察サイドの完全敗北だった。そして、この過程で、検察は史上空前の重大犯罪に手を染めた。捜査報告書を捏造して、無実潔白の小沢一郎氏を刑事被告人に仕立て上げたのである。
これが、第三の小沢氏裁判事件である。
小沢一郎氏は、当然のことながら、完全無罪を得たが、小沢氏を不正に刑事被告人の立場に陥れた、検察の巨大犯罪こそ立件して、その罪を問う必要がある。
ところが、検察はこの重大犯罪を無罪放免にした。
この国は、一言で言って、真っ暗闇である。正義も公正も真実も、何もない。私自身も、暗黒国家日本の犠牲者の一人である。
無実の人間を刑事被告人や犯罪者に仕立て上げる一方、本当の犯人、本当の犯罪者を次から次へと無罪放免にしている。猪瀬氏の行動は、残念ながら、完全にアウトである。
猪瀬氏は潔く辞職するべきだ。
自ら辞職しないなら、必ず辞職に追い込む必要がある。
続きはメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第724号「猪瀬直樹東京都知事は必ず辞職に追い込まれる」にて。
▼関連リンク
・徳洲会マネーは、永田町を震撼させたあの女詐欺師にも狙われていた!(前)
・植草一秀の『知られざる真実』
※記事へのご意見はこちら