<裏側からの影響力>
政策に、国民の意見をより反映させるには、越えなければならない障壁も少なくない。日本の組織構造の持つ問題点である"ムラ"もその1つだ。"ムラ"が経済力、政治力を持ち、裏側で多方面にマネーがバラまかれ、情報操作力を持つに至っている。そのムラは、閉鎖的で、長きにわたって、公共の場から遮断する構造をつくってきた。このムラと、政治に癒着があると、ムラに有利な政策が推進されることになる。
ムラの1つに、原子力ムラがあるが、この原子力ムラも、経済力をバックに裏側からの影響力を駆使してきた。原子力政策では、政官財がそろって、原発を「安全」と言って推進してきた。
エネルギー政策においても、それ以外においても、政官財の癒着を取り払わなくては、国民の声は政治に届きにくいままで終わってしまう。
<政治任用がカギに>
1つのカギは、真に国を思う官僚を、いかにうまく使いこなすかというところにありそうだ。
環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は、「志のある、真っ当な官僚が1割はいる。逆に、とんでもない官僚も1割。残りの8割の官僚は、空気を読んでいる」と話す。
いかに人材を機能的に使いこなすのか。最高学府出身者の多い官僚には、優秀な人材が多く、使いようによって、国益にプラスになるのか、一部の誰かの私腹が肥え、国益が損なわれるのか、大きく左右される。
「政治が、人事指名しないと機能的に使いこなせない。官僚、省庁は自己組織化しているので、難しい面もある。リーダーを指名して、チームにして、効果的に動かす。うまく官僚を使えなかったのが民主党。エネルギー政策について言えば、悪用しているのが自民党」と飯田氏は、正義感に則った政治任用の必要性を説く。政治が、課題と大目標を設定し、チームリーダーを政治主導で指名して、そのチームが機能的に動けば、スピーディに問題解決ができる。
アメリカでは、局長級以上の官庁の人事は、大統領による政治任用となっており、優秀な人材は、政権交代があれば、政府高官と政策研究機関のシンクタンクを行ったり来たりして血のめぐりが良い。また、アメリカでは、政策立案能力の高いシンクタンクがいくつか効果的に動いており、シンクタンクの存在により、政権を離れた野党でもレベルの高い政策立案能力を持っている。
日本でも、それに似た政策立案、決定の構造が必要とされている。民間団体から、レベルの高い政策提言をできる研究機関、シンクタンク的な存在が出てくる必要性が高まっている。もちろん、その機関は、"ムラ"とは無関係、切り離された存在でなければならない。日本も、思い切った官僚の人事断行を行なえればいいのだが、政官財の癒着と既得権益を崩すのは、容易なことではないだろう。
※記事へのご意見はこちら