<なるか、トライアルに倍返し>
トライアル2,808億円、MrMax1,062億円。3倍近い売上の差が付いたのは、トップの経営戦略の差によるものだ。トライアルの永田久男会長(57)と、MrMaxの平野能章社長(55)はともにオーナー経営者で、家業も同じ家電店。違うのは永田会長が家電販売店をディスカウントストア(DS)に発展させた創業者なのに対し、平野社長は実父が始めたDSを継承した2代目であること。
経営戦略に両者の違いが現れている。チェーンストアの常識にとらわれず、ときには無謀にも思える大胆な戦略を見せる永田氏に対し、平野氏は慎重で万事が理詰め。居抜き出店の一方で、北海道のDS、カウボーイを買収し業界を驚かせたと思うと、田川市白鳥工業団地に40億円という身の丈を超える投資をして大型物流センターを建設、店舗に低コストで供給するシステムを整備した。
一方で、経営は危なっかしさもつきまとう。自己資本比率は前期でこそ21.6%に高まったが、長く10%未満の1ケタだった。投資資金も商品回転率と取引先への支払い代金期日の差を利用した回転差資金を利用、出店が止まると資金不足を引き起こしかねないハイリスクな調達方法だ。
MrMaxはトップの性格を映して出店戦略も、チェーンストアの教科書を忠実に守り、ドミナントを形成しながら進める。営業地域は九州と中国、関東。トライアルのように居抜きはせず、自力出店が基本。居抜きだと、店舗の規模や構造がまちまちで、マニュアルに基づく画一的な運営がしにくいためだ。自己資本比率は30%以上を守り、体力以上の無理な借入はしない。
安全運転をしすぎた結果、トライアルに大きな差を付けられることになってしまった。好条件の居抜き物件を見送り、積極出店の機会を逃してしまった。自社で運営する商業施設の開発に経営資源を割き、本業の小売業は2の次になってしまった。売上だけではない。小売業で利益が上がらないため、収益は低空飛行が定着し、前期の売上高経常利益率はわずか0.22%。利益率でもトライアルの1.75%に大きく引き離されている。
最大の失政は、スーパーセンター(SuC)に出遅れてしまったことだ。生鮮売場を併設したDSはトライアルに続き、ルミエール、ダイレックスが相次ぎ参入、MrMaxは最後発になってしまった。
そんな同社が反転攻勢に転じたのは、SuCを展開する体制が整ったためだ。SuCに欠かせない生鮮食品は、トライアルと違ってノウハウも人材も不足している。このため、専門業者のテナントを導入して対抗する。その専門業者の確保にメドがついた。テナントの力を借りれば、鮮度と品質でトライアルに勝てる、との読みだ。
後方体制も整備した。11月から須恵町に低温センターを開設、SuCとセレクト店にチルド日配食品の供給を始めた。専門的な人材の不足には食品スーパー出身者をスカウトして対応する。
後塵を拝してきた積年のライバルに"倍返し"ができるかどうか、MrMaxの新たな挑戦が始まった。
(関連の記事はI・B本誌11月14日号(1886号)で掲載しています。ご参照ください)
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