<小泉元首相発言は一つのきっかけに>
思い切ったことを決断、断行できる第一人者は、首相だろう。フィンランドの核廃棄物最終処分施設を視察した小泉純一郎元首相は、脱原発の方に傾き、「原発は即ゼロがいい。安倍首相が決断すればできる」と首相に政策転換を促した。
この発言は、各界に波紋を巻き起こしている。郵政改革の時は、自らがトップリーダーであり、強権を発動できたが、今は政治の奔流を離れた身。自由な立場からの発言だが、いまだに国民的な人気も誇る小泉氏だけに、流れを変えるきっかけになりそうだ。
<"公共圏"を強化せよ>
社会学的に見ると、原発事故が起こったということは、政府が社会制御に失敗したということ。失敗を繰り返さないためには、どのようにするべきか。社会制御能力、つまりは、社会で生じた問題を解決する能力というのは、国民が積極的に社会に関わり、自分たちの生活を左右する政治に関心を持ち、政策決定のプロセスに今よりも取り組むことによって高めることができる。
裏側からのムラの影響力を取り払い、政策に、国民の意見をより反映させるには、「公共圏の強化が必要。現状は、国民と意見交換をするアジェンダセッティング(議題設定)に失敗。福島の再生についても、失敗している」と、法政大学社会学部の舩橋教授は語る。
公共圏とは、ドイツの哲学者ハーバーマスらが唱えた概念で、自律的な市民が、自由に論議し合える社会的空間のこと。これを強化することで、既得権益を守ろうとする"ムラ"に対抗できる。
公論形成から、政策案検討、政策決定に至るまで、もっと国民が論議し、積極的に関わることによって、社会制御能力を上げることが可能。このことで、舩橋教授の言う公共圏を強化することができ、より政策に国民の意見を反映させることにつながる。
オープンな場で、より専門的に実践的な議論が交わされれば、民意も政治に届きやすくなる。政策が、政府=官僚側から出されたものだけでなく、市民や専門家らによる団体、シンクタンク側から提言されたものが、国会に上がっていけば、より国民の声が、政治に反映されやすくなる。
※記事へのご意見はこちら