学校法人宮田学園グループの理事長として、国内外で活躍する宮田智栄氏。現在、4月に開校予定の国際貢献専門大学校の準備などで多忙な毎日を送っているが、今秋にはインドネシアのバリ島で、現地の日本語学校として長い歴史を持つSTIBA Saraswati大学との提携を結ぶために現地へ赴き、学生たちとの交流を深めた。
<日本人としての誇りを大切に>
――日本語を覚えた子どもたちの就職状況はどうなのでしょう。
宮田 本人たちが有能でも、就職先そのものがない、というのが現状のようです。ただ、観光地ですから観光ガイドを勤めるなどして、フリーランスとして稼ぐことはできます。そのとき日本語が堪能だと圧倒的に有利です。また、日本語のガイドはステータスがあるようで、後に学校の幹部クラスの職に就くということも、実際に出てきているようなのですよ。
――それだけの需要があるのなら、日本語教育制度が整うと良いのでしょうが。
宮田 留学などは国費制度を活用するほかありません。全国から志望者が集まり、そのなかで最優秀の者が選ばれるので、非常に狭き門となっています。もったいないことです。何しろ彼らは優秀なのですよ。小さい頃から伝統芸能で柔軟性が養われるためでしょうか、一度にいくつもの仕事を行なうことができます。ディナーショーでは、イベント用の蛇の飼育係をしているスタッフが、受付から案内係、給仕係から舞台のMCなどと複数の業務をこなし、最後には火を噴く芸まで見せてくれました。多芸でないと職がないというのもあるでしょうが、人間やろうと思えば何でもできるようになるということを示してくれています。
実は、中学生の娘を連れて行ったのですが、自分も今習っているお稽古事に熱心に励みたいと思ったようです。それに日本の良さにも気がついたみたいですよ。自国を客観的に見ることができるようになるのも、海外体験を積むメリットの1つです。自分たちの母国語である日本語を、海外の人たちが熱心に学ぶ姿を見れば、日本がいかに愛されているのかを実感します。
――日本人としての誇りも生まれそうですね。
宮田 そうですね。このたびバリ島を訪れてみて、日本人の方から世界に出て行き、国際的な広い視野を持つようにならなければいけないと強く思いました。日本の着物のように、自国には世界に誇れるものがたくさんあります。その誇らしい日本の国民なのだということを意識しながら、社会貢献を通じて世界に羽ばたけるようになってほしいですね。
――最後にバリ島の若者たちに、どのようなメッセージを伝えて来られたかお聞かせください。
宮田 「賞味期限切れにならないで」ということです。せっかく勉強しても使わないまま知識として頭のなかにしまいこんでいては、そのうち賞味期限切れになって使えなくなってしまいます。そうなる前に、誰かに教えるとか、仕事で使うとか、日本語のサブカルチャーに触れるなどして一度外に出し、再度自分の栄養として吸収し直してほしい、と伝えました。そして、語りかけながら彼らの知識を賞味期限切れにさせないようにすることこそが、私どものような民間学校の使命なのだと思わずにはいられませんでした。まずは受入校である国際貢献専門大学校をしっかりと運営し、短期留学制度を設けるなどして彼らにチャンスを与え、ともに世界にはばたいていきたいですね。
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専門学校国際貢献専門大学校
(2014年4月開校)
国内外での就職を前提に国内外から広く学生を受け容れる。2年制のビジネス専門コースとして、商業実務専門課程のITビジネス学科、商業実務専門課程のグローバルキャリアワーキング学科、文化・教養専門課程のグローバルキャリア日本語教師養成学科の3学科、その他に海外留学コースを設置。学生数定員360人。
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