ある専門商社への取材時に取引行の話題となった。
「メインバンクは、どこでしょうか?」という問いに返ってきた答えは以下のようなものだった。
「河原さん、その考えは古いよ。うちは、3年くらい前からメインバンクを持たない。大体10行と当座借越契約を締結している。限度額も各行大差はなく、ほぼ一律の金額としている。過去メインバンクであった取引行に借入した当初は、支店長や次席の役職者と担当者が一同来社して『精一杯サポートします』と言いながら、業績が低下すると担当者すら訪問しなくなる。1行と深い取引をしていた企業が、ピンチの時に手を差し伸べられることもなくあっさり破綻したケースを目の当たりにしてきた。1行に対して借入金の比率を均等にしておくことが現況ではベストと思う。もちろん、借入なく経営することが一番であるが、取引上やむをえないケースもある」。
中小企業庁の2010年度の中小企業実態基本調査によると、「メインバンクはない」という法人企業の比率は、従業員規模別で異なるが2~5%を推移。依然としてメインバンクを有する企業が圧倒的のようだが、「1年間メインバンクから借入を行なっていない」という法人企業の比率は、50~60%台となっている。メインバンクという形や存在でなく、本質的なメインバンクという概念が、崩壊してきているのではないだろうか。
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