中国のテレビ番組に日本人が出演することは依然として厳しい。しかし、ここ数年、台湾の政権与党が国民党になって以降、台湾と大陸の交流は堅調だ。以前は、かなりハードルが高かった「台湾人の大陸テレビ番組への出演」も事前申請が簡略化している。特に厳格だったのは国家が管理するCCTV(中国中央テレビ/全国放送)で、台湾人は出演すらできなかった時代もあったが、現在は歌謡番組などで台湾人タレントが司会を務めるケースも出てきている。
台湾人タレントが大陸の番組に出演するということは、数年前までならば「裏切り者」扱いだったが、現在は大陸の経済成長もあり、ギャラが「台湾の3倍」という相場。金には換えられないということで、次々と台湾人タレントが大陸に進出している。
しかし、出演の際、台湾人タレントが飲まなければならない条件がある。それは「台湾を『中国の一部分』との前提を認めたうえで出演する」ということだ。
台湾人をゲストに迎えた場合、中国人司会者は「台湾も国内にあって」「同じ国の中にあってなかなか会う機会が少ない」などと、台湾人ゲストに対して「同じ国の中にある」ということをいちいち強調する。台湾人ゲストもその言葉に否定するわけでもなく、なんとなくの相槌を繰り返している。
その光景は、隠れキリシタンに対する「踏み絵」のようにも見えてくる。「ギャラを受け取っているのだから、そこは認めろよ」という交換条件が成立しているのだ。
そして、「言葉遣い」においても、大陸側ディレクターから台湾人に対しての事前要求がある。それは「中国台湾」「中国大陸」という単語を言わないこと。中国台湾は問題なさそうだが、あえてそういう風に台湾人が言ってしまうと「言わされている感が丸出し」だからだ。「中国大陸」も同様で、「中国」といちいちつけるな、ということである。万が一、つけてしまった場合は、NGとなって撮り直しになる。中国で、生放送の番組はニュースとスポーツ中継以外、ほとんどないから、こういう演出も可能だ。台湾人が口語的に使う「台湾」「大陸」なら問題ないとのことだ。
一方、台湾テレビ番組に台湾人ゲストが出演し「中国大陸」について触れる場合、以前は「大陸(ダールー/少し侮蔑のニュアンスを含む)」と言っていたが、最近は「中国」「中国大陸」と呼ぶようになっている。仮に呼ばなくても、字幕で「中国」という語句が補足される。中国、台湾の歩み寄りは、言葉遣いの面でも「折衷点」が双方のテレビ局で生まれている。
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