<現在稼働ゼロの原発も計算に>
河野太郎衆院議員は、ブログで「そもそも東京電力の原発は今、全部停止しており、再生可能エネルギーを購入したからといって、原発のコストを回避可能費用に参入することには無理があります」と指摘。現在止まっている原子力や、運転コストの安い水力を平均値の計算に入れるのは確かに理にかなわない。
「安いものから順に運転し、コストが高いものから減らす」という企業の心理、経済合理性の観点から言えば、電力会社であっても運転コストの安い電源から動かし、自然エネルギーを買い取った分、運転コストの一番高い石油火力を減らすのが、真っ当な経費削減のあり方だ。
なぜ、経産省は、全電源の平均値を取るという計算手法を取っているのか?この経産省の計算手法は、実際の電力会社の実態とも合わない。たとえば、東京電力では、石炭火力は最大限に動かす電源となっており、12年の電気料金審査委員会において「運転単価の安い電源がより高稼働率になるように計画する」としている。木村研究員は、「経産省のロジックとしてよく使われるのが、どの電源がどの程度、減ったのか『特定できません』というもの。ただ、全電源から平均値を取るのは、実態からは遠い。なるべく早く是正してほしい」と、早急な改善を求めた。
<クローズな構造が要因>
国民の生活に深く関係する電気代の話なのだが、普通に生活していれば、この「経産省によるぼったくり」には、気づかない。「ほとんどの人が、気づかないでしょうね。調達価格は、オープンになっていますが、回避可能費用は、クローズのままになっています。法律にも、『経済産業大臣が決める』としか書いていません。省令により、経産大臣がどのように決めようが"自由"ということになっている」と、木村氏。
欧米では15分ごとに決められている電力のスポット価格、卸市場価格が、回避可能費用を決める一つの指標になっている。「日本では、電力のスポット価格は30分ごとに決められ、まだ成熟しているとは言えませんが、電力自由化が始まりますし、この電力卸市場を活性化させ、回避可能費用も、その値段を指標にして計算する方がいい」と語る。小売りの自由化など電力システム改革を進めるにあたって、クリアすべき課題の一つだ。
【岩下 昌弘】
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