高島宗一郎福岡市長に対する不満が解職請求(リコール)という形で表面化する。火をつけたのは、中央保育園移転問題。安全・環境面に問題があることから現・移転予定地に反対する保護者たちは、「高島市政の市税のムダ遣いは市民全体の問題」として広く訴える。近日中にあらためてインターネット上で表明する予定だ。福岡市選挙管理委員会によると、市長・市議会へのリコールはともに記録上初。
福岡市におけるリコールは、解職・解散を決める住民投票を行なうために、30万を超える署名が必要であり、署名の募集期間は2カ月とハードルは高い。必要な人員などを考えれば、気軽に市民が起こすような内容では決してないが、保護者らは強い覚悟をもって行なう構え。高島市政は市史に汚点を残すことになる。
1日、保護者らは、農民会館(福岡市中央区今泉)で、社会福祉法人 福岡市保育協会 中央保育園の移転問題をテーマとしたシンポジウムを開いた。参加者は、子育て世代や周辺住民らを中心に100名超。会場は席を足すほど満員になった。
シンポジウムでは、まず、移転の経緯や問題点、現在起こしている仮処分と住民訴訟について説明が行なわれた。仮処分では、福岡市に移転計画の中止、(社福)福岡市保育協会へ新保育園の建設中止と開園の中止を求め、住民訴訟は、現・移転予定地の土地購入費約9億円がムダな支出として損害賠償を請求している。また、保護者の会代表・堀田剛氏は、市議会の承認を得ていた現地建て替え計画を反故にした高島市長を『背任罪』の疑いで告発し、福岡地検が受理した。
後半の質疑応答では、移転事業の中止へ向けて、かっ達な意見交換がなされた。そのなかで「反対する保育士の先生たちを応援したいと思っているが、すごく説明をしないと周囲に理解してもらえない」といった質問があった。堀田氏は、「本来、反対すべき一般社団法人 福岡市保育協会や(中央保育園を運営する)社会福祉法人 福岡市保育協会が推進している」「メディアがなかなか報道しなくなった」などと問題点を上げた。
一方、周辺住民からは、風営法の関係上、保育園があれば営業権譲渡が困難になるためラブホテルなど風俗施設がなくなり、地価が上がることから移転を望む土地所有者が少なくはないといった情報も寄せられた。まさに"私欲のために子どもを出汁にする考え"だが、福岡市の保育行政がそのように見られているとも言える。もちろん周辺住民のすべてが賛成ではない。「移転予定地の前に住んでいるが反対している」と、誤解を招かぬよう反対意思を強く表明する男性もいた。
最後にあいさつに立った中央保育園弁護団団長の梶原恒夫弁護士は、「広がっていく良識ある健全な世論を無視することはできない」「世論と裁判で連携し、不当なことを福岡・日本で許さないようにしましょう」と、呼びかけた。また、保護者から「中央保育園移転の再検討を求める申入れ」として市議会に提出する請願署名への協力も呼びかけられた。参加者はこの後、会場に隣接する現・移転予定地の状況や車で混雑する狭い前面道路の様子を視察。緊急事態の発生時や日常の送迎において、幼い子ども300人が通う新・中央保育園の危険性について認識を高めた。
同シンポジウムでは、高島市長と市議会に対するリコールの準備が進んでいることの説明も行なわれた。開園遅れにともなう避難計画の変更などについて市側が説明責任を果たさない移転計画は、市民に対する不誠実な行政の象徴と言える。老朽化した公共施設の建て替えラッシュという福岡市民にとって重要な課題を担っている現市政。福岡市民は、"負の遺産"となるような施設を長期間利用する羽目にならないよう、中央保育園移転問題を一例に「高島市政に未来を託せるのか?」を考える必要があるだろう。
▼関連リンク
・中央保育園移転問題(保護者の会HP)
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