演劇や絵画などの分野で幅広く芸術活動を展開する中島淳一氏(劇団エーテル主宰)が、フランスのコート・ダ・ジュールにおいて開催された「国際芸術大賞(日仏合同)展」に出品した「roses 薔薇F30」が日仏賞を受賞。ニース市立美術会館で開催された「フランス国際絵画・彫刻グランプリ」に招待出品された。「60歳を超えて新たなエネルギーが湧き出るのを感じる」という中島氏に、現在の創作に対する熱い想いを聞いた。
同作品には受賞前から買い手がつくなど、国内でも注目を浴びていた。「この鮮やかな赤の色彩は、今までの中島氏の作品にはなかったもの」との声も聞かれる。
これについて中島氏は「私も昨年還暦を迎えました。画家にとって60歳は新人。創作にも新たなエネルギーが沸くのを感じます」と語り、芸術活動が円熟期に入ったことを示した。
抽象画を主としていた中島氏が具象画を手がけ始めたのは8年前。舞台公演の後に贈られる薔薇の花束を部屋に飾り、見つめているうちに自然と創作意欲が沸くようになったという。贈られる薔薇は赤いものが多かったこともあり、積極的に取り入れていくうちに、新境地が次々と展開していった。具象画でありながら抽象画と言うべき薔薇の連作は、花瓶を描きつつも単なる花瓶の模倣に留まらず、薔薇の花、背景、花瓶が融合し、キャンパス全体からは躍動感が迸る。静物に命が吹き込まれ、そこから発揮されるエネルギーが観る者の心を捉える。
「60歳を超えると、人は肉体的に衰え始めますが、執着心もなくなり、その分エネルギーが全部創作に注ぎ込まれるようになる、そんな手ごたえを感じています。自然と手が動き、気がついたら完成している。創作しているうちは、何も考えてない状態です。"無心"という言葉の意味が、実感としてわかるようになりました」(中島氏)
舞台と絵画創作の両極を行き来しているのも中島氏の創作意欲を常に新しいものにしているようだ。そこに共通してあるのは「創作にかけるときめき」。己の中から湧き出る熱い想いが不可欠。「創作とは、本人自身に"表現したい"という情熱がなければ持続するものではありません。若い頃、"老いてもなお創作を続けることは難しい"と言われましたが、長年創作を続けられることのありがたさもわかるようになりました」と中島氏。
1月25日には一人演劇「オセロ」の公演を行なう。演劇活動もますます盛んだ。「舞台と絵画、ふたつのことを行なうと、ともすればどっちつかずになる可能性もありますが、私の場合、良い様に作用してくれているようですね」と中島氏。
これからの創作活動がますます期待される。
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※中島淳一氏のHPがリニューアル
<プロフィール>
中島 淳一(なかしま・じゅんいち)
1952年、佐賀県唐津市出身。75~76年、米国ベイラー大学留学中に、英詩を書き、絵を描き始める。ホアン・ミロ国際コンクール、ル・サロン展などに入選。日仏現代美術展クリティック賞(82年)。ビブリオティック・デ・ザール賞(83年)。スペイン美術賞展優秀賞(83年)。パリ・マレ芸術文化褒賞(97年)。カンヌ国際栄誉グランプリ銀賞(2010年)。国際芸術大賞(イタリア・ベネチア)展国際金賞(10、11年)、国際特別賞(12年)など受賞多数。
詩集「愁夢」、「ガラスの海」、英詩集「ALPHA and OMEGA」、小説「木曜日の静かな接吻」「卑弥呼」、エッセイ集「夢は本当の自分に出会う日の未来の記憶である」がある。
86年より脚本・演出・主演の一人演劇を上演。企業をはじめ中・高校、大学での各種講演でも活躍している。福岡市在住。
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