<第4、永久秘密として隠せる仕組み>
もう1つ最後の問題、いくら隠しても将来は30年たったら公表するという。外交、防衛のどんな文書も国民共有の知的財産だ。官僚の私有物ではない。ところがはき違えている。「これは俺たちのものだ、出すか出さないか俺たちが判断する」と。
私が起こした沖縄密約開示請求訴訟で、最高裁は近く判決を出すが、1審で大勝利した。2審でも事実上勝ったと私は見ている。2審判決は何と書いたか。「沖縄密約文書というのは、歴史的に第1級の価値のある文書である。永久に保存するべき文書である」。国民共有の財産として永久に保存しなければいけないという判決だ。
今の官僚は何を考えているか。そんな意識のある官僚はいません。「俺たちがつくったもの、保有している文書は俺たちのものだ。だから俺たちが開示してやるんだ」。
米国の場合、25年たったら95%開示する。25年たったから沖縄の密約を含む大密約文書が全部開示された。米国の開示がなければ、日本は闇のなかで誰も知らないで終わる。1998年から2000年にかけて、米国で外交機密文書が開示された。情報公開ですよ。だからこそ日本人はその事実を知った。そのおかげで、私たちは裁判を開始することができた。米国という国は、機密は機密としてやるが、公開は徹底してやる。情報公開ありき、そして機密が補完する。日本はそうじゃない。法案はとうとう開示するのに60年になった。米国は原則25年で、30年~35年。日本は60年。だからみんな知らないうちに死んでいく。そして60年たったら全部公開するというのは、原則として書いてあるだけ。その上にエクスキューズ、除外できる項目が6つも7つもある。ということは何か。もしこれが永久に隠しておかないといけない、非常に不当な違法な違憲な秘密だと思ったら、永久秘密として存続できる仕組みが今度の法案にちゃんとできている。完璧な法案だ。それを野党の一部はOKだという。これは修正ですか、修悪ですよ、こんな日本なんです。
<国が情報を独占、選択、操作し、民主主義が空洞化>
国の情報は基本的に言えば、国は独占している。今は「守らなければいけない、隠さなければいけない」ということばかり言われているが、自分たちにプラスになる、自分たちの政権基盤を強化すると判断したら、都合のいい情報は怒涛のごとく流しますよ。リークというやつだ。また、あらゆる組織が記者会見する権利を持っているから、あらゆる組織を動員して報道機関に自分たちに都合のいい情報を流していく。自分たちの政権を正当化できる情報は全部流していきますよ。国家は国の情報を独占して、選択して、操作することができる。こんな恐ろしいことはない。
はっきり言って、そういう国家だからこそ情報公開しなければいけない。自分たちに都合のいい情報だけ出して、都合の悪い情報は隠す力を持っている。そこにもってきて、さらに秘密を守る、情報公開はいらないとなったらどうなりますか。主権者国民にはそんな一方的な情報しか入らない。選挙する時、政権に都合のいい情報しか主権者の頭のなかに入っていない。
もし沖縄密約が情報開示されていなかったらどうなるか。沖縄の密約は一切わからなかった。日本の内部から沖縄の密約の「み」の字も出なかった。私が、400万ドルという、沖縄の密約のほんのちょっと、全体の2~3%を叩いた程度だ。すでに恐ろしい国なんです。情報開示がない、隠ぺいされ、偽装される歴史だ。真実は、大事な問題は覆い隠され、逆にいえば政権にとって都合のいい情報はどんどんリークされる。沖縄返還の時何と言ったか。「核抜き・本土並み」だと言ったじゃないですか。新聞の1面に毎日のように報じられた。事実は「核付き・沖縄並み」じゃないですか。基地の自由使用で、日本が沖縄並みになった。
そんな大きなミスリードをされる。ミスリードされるということは、主権者である国民がミスジャッジするということだ。選挙のときの主権者の投票がミスジャッジの投票になる。民主主義の空洞化だ。
以上のように、1つ目は、すべての分野において特定秘密はどんどんできる。際限なくできる。それは官僚がつくる、大臣がつくるのではない、無限に彼らの恣意的判断でどうにでもなる。2つ目は、特定秘密は、水面下でエリート官僚がつくり官僚支配を強化する。3つ目は、チェックするというがチェックする機能は何も具体的に保障されていない。4つ目、永久に秘密にしようとすれば、エクスキューズが入っているからエクスキューズを当てはめればいい、いつでも永久秘密にできる。これが法案の問題点だ。
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