<問題の本質を全部、国民に資料提供して、説明と理解を尽くすのが民主主義>
かつてスパイ防止法が中曽根内閣の時に出たことがある。世論が大反対したと同時に、与党の内部が反対してつぶした。メディアはだいたい一致結束して反対してあたって、スパイ防止法は駄目になった。
それから20年くらいたつ。恐るべきスピードで、憲法改正、集団的自衛権、日米同盟の三位一体の作業が進んでいる一環として、秘密保護法制ができることだ。
民主主義ですから、多数与党がやる。憲法改正をやってもいい。何をやってもいい。内閣がやろうとすれば阻むことはできない。それに伴って大事なことは、その問題の本質を全部国民に説明して、国民に理解させて、こういう考え方でこれをやるという説明、説得が必要だ。もしそれに反対するなら。どうぞ反対してください。資料は全部提供します。これが、民主主義だ。説得と理解の手段が完璧に実行されたうえで、それでもなお多数決で決まるというのは仕方がない。
しかしそうではない。日米同盟、安保に関する限り日本の建前と実際は全然違って、偽装された情報ばかりを流して、国民をミスリードして、日米同盟を聖域化して、今日の日米同盟をつくったのが歴史だ。
<イラク戦争――大義名分はでっちあげ。米英は嘘を認めても、日本は認めず>
私は、いかに情報操作され、情報がミスリードされて、国民を誤導して、日米同盟を強化再編した事例として挙げるが、私はイラク戦争の時にびっくりした。
イラク戦争というのは、日本にとってベトナム戦争に次いで大変な問題だった。同盟国の同じ戦敗国ドイツは結局反対した。参加しなかった。
大義名分に疑義あり。まさに嘘だった。大義名分は何だったか。イラク戦争の米国の大義名分は、第1に、アルカイーダというテロ集団とイラクの政権が非常に親密な関係にある。テロの防止策のためどうしてもフセイン政権を倒さなければいけないというものだった。もう1つの言い分は、大量破壊兵器をどんどん秘密裏に作っている。この2つだった。全部でっちあげだった。米国は自ら嘘を認めた。
もっと言えば、日本と違うのはそこだ。嘘だということが、正確に客観的な資料に基づいて発覚して肯定されたら、米国政府は認める。英国もそれを認めて、議会で徹底的に検証した。そしてイラク戦争は終わった。米国は、イラクとアフガンに306兆円というお金を使った。米国の財政赤字は1,200兆になるが、アフガン戦争が始まる前は400兆だった。3倍になった原動力は、イラク戦争でありアフガン戦争だ。この戦争で何が残ったのか。今イラクは内乱状態だ。今年に入って約7,000人死んでいる。シーア派と少数派との激闘が続いて、毎日がテロ、テロ、テロ。米国が残したのは内乱だ。しかも何百兆という金を使っている。それなに、日本政府は戦争が終わっても、いまだに大義名分の2つを、正式に嘘と認めて悪かったと言わない。
航空自衛隊がイラクに出て行った。航空自衛隊が参加したのでびっくりした。憲法違反ではないかと。冗談じゃないんですよ。政府は、国際連合の人道支援のためと言った。戦争被害者、難民、供給物資を運ぶから何も問題ないと国会で政府は説明した。
また密約があるのではないかと情報開示請求した。文書として、イラクにおける航空自衛隊の活動について知りたいと。自民党政権で開示された文書は、全部黒塗り、真っ黒だった。何もわからない。その後民主党政権に変わったので、情報公開を旗印にしたから今度は出してくれるだろうと請求したら、出した。
国連の人道支援で運んでいる物資は、全体の28%しかない。7割は、武装した米軍を毎日ピストンのようにクエートからバグダッドまで運んでいた。武装米兵の運搬だから、要するに、米国と戦争をいっしょにしているわけだ。イラク戦争に参加したということは憲法に違反すると名古屋高裁は判決を出した。その時の外務大臣は、今の自民党副総裁だ。なんと言ったか。「こんなクソ判決、おれが政治家を辞めて暇になってから読んでやる」。現職の外務大臣が、違憲という判決が出ているのに、そんな論評ですよ。これが日本だ。
そのようにして、絶えず情報を偽装して虚偽して、国民をミスリードしていく過程で、日米同盟を強化し、聖域化して、官僚が巨大化していく。
<辺野古移設――「県外」をつぶしたのは、米国ではなく日本の外務省>
今、普天間から辺野古に持っていく沖縄基地問題。大変な問題です。昨日、沖縄に行ってきたが、12月に入ったら、知事はいよいよ結論を出さざるを得ない。辺野古沖の水面を埋め立てる許可を出すのは知事ですから。どうも怪しいぞ、埋め立てに反対するような姿勢を示してきた知事が認めるのか。沖縄選出の自民党国会議員が公約をひっくり返して県内移設を認める。
普天間から辺野古へ移すということに、民主党初代内閣の鳩山内閣は、「それはいかん、沖縄は戦争中も戦後もずっと日本の犠牲になっている」と、県外移設を打ち出した。サンフランシスコ講和条約で沖縄を外してしまったのだから、沖縄戦で本土の犠牲になって県民が何十万人と死んでいるのに、沖縄およびその周辺諸島だけ米国統治を継続させた。すごい国です。天皇メッセージをご存知ですか。天皇は、天皇制を維持するために沖縄を米国に占領させようと言った。沖縄は戦争中も戦前も戦後も犠牲になり続けている。そこで、鳩山は「県内は駄目だ、普天間の移設先は辺野古では駄目だ、県外に持って行く」と言った。結局つぶれた。誰がつぶしたのか。米国ではない。日本の外務、防衛官僚だ。その時の秘密文書が出てきた。日本からではなくて米国から出てきた。なんて書いてあるか。「絶対に米国は政策変更しちゃいけない。従来通り、辺野古を守り抜いてくれ。辺野古という移転先を変えるようなことを内閣は言い出したが、これはつぶす。絶対既定方針通りやっていく」と頼み込んで進言しているのは、日本の外務省の事務次官だ。
こういう国というのはほかにない。日米体制が聖域化して、そのために外務省が死にもの狂いになって守ろうとしているか、それを証明する1つの例だと、私は思っています。このようにして、情報は絶えず偽装され、あるいは協定に虚偽表示される、その累積で今日まで来ている。その累積の結果、情報公開をしなければいけない、どうしても我々は情報公開を勝ち取っていかなければいけないというのを、歴史状況のなかで生み出してきた。それで、民主党政権は情報公開を旗印にして、今から2年半前に国会に情報公開法改正の法案を出した。審議を何もやらず、廃案になった。
本来は、情報公開法というのをつくって日本を本当の民主主義の国にしたうえで、秘密保全でカバーする発想でなければいけないのを、秘密保全で完璧に専制的な情報管理をマスターして、それを基にして、情報公開法の改正は握りつぶしてしまう。本末転倒です。今までの日本がやってきたことに照らして考えれば、そういうような現状になりつつあるということを、事実関係をよく認識していただいて、この問題に1人1人真剣に取り組んでいただきたい。
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