「そういえば、あの話ってどうなったんだろう？」。カウンターで飲んでいると、となりにいた馴染みの客が尋ねてきた。中洲にあった裏カジノが摘発されたという話である。
かつて中洲には違法賭博店が多く存在していた。昔ながらの「ゲーム喫茶」が当たり前のように看板を出して営業していたが、2008年ぐらいから警察の取り締りが厳しくなってから激減。それでも数軒はまだ存在しているようだ。営業形態は、カジノ、闇スロットと色々あるが、最近では、携帯端末でインターネット上のカジノサイトを利用するケースもある。
今年６月、横浜市で摘発されたカジノ賭博店では、店で使っていたiPad10台も押収された。近年、カジノ解禁を求める声が強まり、政界でも議論されているが、現時点では違法。当然ながら、無届で営業している裏・賭博場（違法）であり、利用客も賭博罪などで罰せられる対象となる。
裏・賭博を検挙する際は、現行犯逮捕が基本。時間をかけて捜査（内偵など）をし、タイミングを見計らって一斉に店内に突入、「ハイ、ストップ！動かないで！」となる。「同伴でお客さんに連れられて裏カジノに行ったことがあるよ。食べ物や飲み物がタダで、焼きそばを食べていたら、警察が入ってきて捕まっちゃった」とは、キャバクラで働くＡ嬢。賭博には手を出していなかったが、取り調べを受けたという。
名古屋市では今年６月、負けた客を監禁していた裏カジノの店員が店内に立てこもり、SIT（捜査１課特殊班）が出動。隊員が高所作業車と屋上からロープで降り、窓ガラスを割って突入するという派手な捕り物があった。『ハイリスク・ハイリターン』の『リスク』には、金銭以外のものも含まれている。
違法賭博の摘発は、"見せしめ"として、マスコミで大々的に報じられることが多い。警察の捜査班が、店からバカラ台やルーレットを運び出す様子をニュース番組で見たことがある人も多いだろう。ところが、中洲の裏カジノ摘発については、なぜか表沙汰になっていない。摘発された店があったビルで営業している飲み屋によると、警察が捜査に入ったのは事実。同じビルの他のテナントでは、警察が出入りすることを危惧した某ランパブが営業内容をかなり自粛し、売上に影響が出たという。
中洲では知る人ぞ知る裏カジノ摘発騒動。今なお捜査継続中とか、福岡で著名な"大物"が関わっていたとか、様々な憶測が中洲関係者の間で飛び交っている。今は、店が狭くてもインターネットで賭博ができるため、小規模の飲食店用テナントでこっそり行なわれていたとも考えられる。当然ながら、裏カジノと知っていてテナントを貸したとなれば罰則の対象。まさか、「裏カジノをやりたい」という客に紹介するところがあるとは思えないが・・・。
長丘 萬月 （ながおか まんげつ）
福岡県生まれ。海上自衛隊、雑誌編集業を経て2009年フリーに転身。危険をいとわず、体を張った取材で蓄積したデータをもとに、働くお父さんたちの「歓楽街の安全・安心な歩き方」をサポート。これまで国内・海外問わず、年間400人以上、10年間で4,000人の風俗関係者を『取材』。現在は、ホーム・タウンである中洲に"ほぼ毎日"出没している。
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