「ユッケジャン」(ユッ(ケ)=牛肉、ケジャン=スープ)とは牛肉とごぼう、人参などの色々な野菜、ナムル(蕨やモヤシなど)をゆっくりゆでたスープ料理で、そこに「クッパ」(スープとご飯を組み合わせた「雑炊」)の要素が加わったのが「ユッケジャンクッパ」だ。
ユッケジャンクッパの楽しみの1つは「牛肉の柔らかさ」。とろとろに煮込まれた牛肉は、韓国の代表的牛肉スープ「ソルロンタン」とも共通する「牛肉の味わいを引き出す」というコンセプトに基づいている。ゴボウの歯ごたえもアクセントになる。ナムルやゴボウなど、芯の強い歯ごたえを持つ野菜、根菜も支える要素の1つ。
さらに大きな特徴は、その「辛さ」。中華・四川料理などの辛さは山椒にある(舌が痺れる)が、韓国料理の辛さは「唐辛子」が基調だ。「辛さ→バテ予防」という定説もあるが、この定説には、1つのクッションが必要だ。「辛さ」だけで、バテ予防には繋がらず、「辛さ」が食欲を刺激することで、食の量が増し、体力と免疫力が向上、バテ防止に繋がるという理屈。つまり「辛さ→食欲増進→バテ防止」という構造なのだ。しかし、辛さが強いため、「食べ慣れない」日本人も多い。
一方、韓国式すき焼きと呼ばれる「プルコギ」は醤油ベースで甘口の下味をつけた薄切りの牛肉を、長ネギ、人参、玉ねぎなどの野菜と共に焼いたもの。醤油、砂糖、蜂蜜、清酒、ごま油などの調味料に、ニンニクや生姜、ナシやリンゴなどもおろして加えたヤンニョム(つけダレ)に、薄切り肉を漬けこむ。日本の韓国料理屋では、皿に白飯、キムチとともに「定食」として出されるパターンも多いが、本場ではプルコギ専用の鍋(プルコギパン/中央が盛り上がり、周辺に溜まった肉汁に漬け中央で肉や野菜を焼きながら煮込む)を使って調理される。肉汁に水とキムチを足し、キムチチゲ風にして食べることもできる。
ある韓国人行政担当通訳者は「韓国は昔から、アメリカやオーストラリアのように良質な牛肉が流通しなかった。値段が高く、いざ入手できても安物の肉。『安い肉をいかに美味しく食べるか』を試行錯誤した結果、『タレにこだわる』ところに行き着いたのではないか」と指摘する。その結果、「こだわりの牛肉を、炭火や鉄板で焼いてタレや塩で食べる」という日本のシンプルな手法とは異なり、韓国では、漬け込みダレにこだわった独特の牛肉調理法が存在する。
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