<まちづくりへの貢献を評価し容積率をアップ>
福岡都心の民間ビルの多くは、戦災復興や博多駅の土地区画整理後に集中的に建設されました。当時は容積率の考え方はなく、31mの高さ制限のなかで立地しており、これらは容積率に換算すると約1,000%前後ということになります。ところが1973年に容積率制度が導入され、本市では建物の延床面積が、制度導入前の8割程度に設定されました。
容積率指定以前に建築されたビルは、近年その多くが更新時期を迎えていますが、建て替えを行なうと、容積率の制限により、ビルは新しくなっても床面積が減少し、家賃収入も減ってしまいます。そのため、ビルのオーナーがなかなか建て替えに踏み込めない、ひいては新たなまちづくりが進まないという状態が続いてきました。
福岡市ではその解決方策として、2008年8月に「福岡市都心部機能更新誘導方策(容積率特例制度)」を策定しました。この制度は、地区計画等を活用するもので、従来は公開空地(セットバックによる歩道状空地や広場など)の量により容積率の評価の組み立てを行なっていましたが、新たに「まちづくり取り組み評価(最大400%緩和)」を加えたものです。「九州・アジア」「環境」「魅力」「安全安心」「共働」の視点から都心部の機能強化と魅力づくりにつながるまちづくりを推進するのが目的で、空港が都心部に近接するために影響する航空法による高さ規制を考慮し、公開空地のみによらない容積率緩和を可能としたものであり、全国的に見ても画期的な取り組みだと思います。
三大都市圏とは異なり、都心部に高い建築物が建てられない福岡市にとって、地域の課題を捉えた効果的な取り組みだと思っています。都市間競争が進むなか、時代のニーズに合わせまちをより良く変えるためには、古い建物を新しく変えることが必要です。市としても世界基準に合った「建物」に変えてほしいという思いから、それを後押しする意味でこの制度をつくりました。そして、その建て替えに際し「まち」に対する貢献をしてもらうことで、世界基準の「まち」をつくっていくことを目指しています。
この制度を活用した事例としては、旧博多郵便局の立地する博多駅南西街区があります。また、天神明治通り地区や博多駅前通り沿いに建設予定のLINE(株)の福岡社屋が本制度の活用に向け、取り組んでいるところです。
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