昔から『金貸し業』というのは、殿様ビジネスと見られていた。借り手は金主に遜(へりくだ)って頭を下げる、果ては土下座までして申し込むという構図が浮かんでいたものだ。ところが最近、様相が一転してきた。金融業の環境が様変わりしてきたのだ。極論を言えば、単純に金を貸すだけでは商売が成立できないのである。
<情報の先手有効活用>
吉田邦宏社長が西日本シティ銀行から第一ゼネラルサービスに転籍するまでは、旧福岡シティ銀行のOBで占められていた。彼らの共通の融資ビジネススタイルは、人情融資である。『飲み食い・ゴルフをして貸出する』という旧来のやり口であった。融資ビジネスを組み立てる工夫が皆無で、これでは様変わりの銀行との激烈な融資戦争には対応できない。そこに、良い塩梅(あんばい)で旧型のメンバーたちが卒業した。おかげで、吉田社長の経営手法が浸透しやすくなった。
吉田社長の経営手法の特性は、『入手した情報でビジネスを組み立てる』ということだ。金融業である同社には、全国から融資の申し込みがある。この情報に向かい合いつつ、「この案件は融資するか、事業をやるか」と判断する。たとえば、東北震災復興現場では、飯場(現場宿舎)建設・運営が必要とされている。「これはうちの関連会社で運営するビジネスにしよう」と決断する。融資ビジネス情報に『いかに付加価値をつけるか』を真剣に検討するのである。「ただ漫然と貸す旧態依然のスタイルでは、必ず淘汰される」という認識で疾走している。
<最終的にはストックビジネス>
九州リースサービスは、先輩としての蓄積はある。2008年のリーマン・ショック以前から、不動産融資に対する多様な開発をしてきた。たとえば、リートを駆使した共同事業の推進である。デベロッパーに貸すだけでは妙味がない。中央区薬院に100戸のマンション販売事業を計画するとする。Aマンション業者が事業主になれば、事業資金を提供し利鞘を稼ぐだけだ。このことを共同事業として組み立てて、リートというかたちで資金を捻出する。そうなると、九州リースサービスは販売利益の分配にも、口出す権限を有するようになるのである。
このリートの経験を踏まえて、レジャー施設のM&Aに着手した。さらに、商業施設の事業主になり、運営ビジネスにもチャレンジしている。最近目立つのは、メガソーラーの経営である。筑豊・宮若市でメガソーラーの共同事業を手がけた。運営会社の出資など積極的な展開を行なっている。毎月、確実な電気料金が見込まれるビジネスである。だから考え様によっては、長期貸付先から定期金返済(金利込み)をいただく融資モデルと同一だ。
2社とも、金融業に分類される。一度、長期融資をすると、ストックビジネスに等しい。だからいくらでも応用できる。不動産融資をしていて利回りが高ければ、自社グループ所有にして家主業に専念すればいいことだ。融資する優位の立場を活かして、案件によっては自社経営事業にするかどうかの賢明な選択すれば済むことだ。『金を貸せばビジネスが成就する』単純な時代ではない。成功のポイントは、知恵の活用にかかる。
中小企業の経営者の皆さんに問いたい!!金貸しですら儲けるのは至難の時代ですぞー。中小企業はいかなるときでも、報われることの少ない存在だ。それを踏まえて、あえて苦言を呈する。御社は「儲からない、儲からない」と嘆いているだけではありませんかー。それでは座して死すのみだ。金融業者ですら、利益捻出に奔走している。その努力の爪の垢を煎じて飲んで、打開策を探るべきだ。
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