NET-IBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、みんなの党の江田憲司氏が正式に離党し「既得権益を打破する会」を結成することについて、本当の既得権益打破とは何かを考えたうえで江田氏の新党結成を今後の新たな政界再編の契機とするようにと主張する12月8日付の記事を紹介する
政局は新たに三極構造に転換する。みんなの党の江田憲司氏が12月9日、みんなの党を正式に離党して新党結成に進む。江田氏は、民主党の細野豪志氏、日本維新の会の松野頼久氏と、「既得権益を打破する会」を12月10日に発足させる。江田新党は、政界再編を仕掛ける構えである。みんなの党は党勢を失い、自民党の別働隊として動くことになるだろう。
注意が必要なことは、「既得権益を打破する会」とは言うものの、この勢力は、日本における既得権益の中核である米国には隷従するスタンスを示すことだ。
日本の既得権益とは、米・官・業の三者をいう。私はこれに、政・電を加えて、米・官・業・政・電の五者が日本の既得権益であるとしている。米・官・業・政・電はピラミッドの構造をしているというのが私の認識である。ピラミッドの頂点に位置するのは米国である。
日本の司令塔、日本の既得権益の頂点に位置するのは、「米国」なのだ。「既得権益を打破する会」は日本の既得権益の中心をなす「米国」を打破の対象にしていない点に最大の特徴がある。
2009年に鳩山由紀夫政権が発足した。この政権こそ、本当の意味で、日本の既得権益を打破する政権であった。打破される、米・官・業が連携し、政と電を手先に活用して、既得権益を打破しようとする鳩山政権のせん滅に突き進んだ。この過程で、日本政治史上、最悪、最大の政治謀略事案が実行された。既得権益がせん滅の標的にしたのが「小鳩ライン」である。「小鳩ライン」は巨大政治謀略工作によってせん滅され、「小鳩の春」はわずか8カ月半で幕を閉じた。
既得権益の中心に位置する米国は、日本に新たな二大政党体制を構築しようと躍起になっている。最大の脅威は、「小鳩ライン」の流れをくむ勢力の台頭である。このために、昨年の総選挙、本年の参院選では、小沢新党である「日本未来の党」=「生活の党」が徹底攻撃の対象になった。この勢力が、既得権益勢力に対峙する主権者勢力の中核存在であるからだった。
米国は、主権者勢力をせん滅し、新たに、既得権益勢力=対米従属勢力だけによる、新たな二大政党体制を構築しようとしている。二大勢力のひとつが自公勢力であり、これに対抗する、もうひとつの対米従属勢力を二大勢力の一角に育て上げようとしている。それが、民みん維新新党である。
「みんな」が渡辺党と江田党に分裂して、江田党が民主・維新と結ぶことになる。とはいえ、維新も雑居部隊であるから、維新も分裂含みとなる。維新からも新党に合流する者が出てくるだろう。
維新には、旧自民党と呼ぶべき古色蒼然グループが存在する。旧「たちあがれ」の流れをくむ議員だ。これらの議員は、最終的に再び自民党にすり寄ることになるだろう。江田新党が離脱した「みんな」も自民党にすり寄るしか居場所はなくなるだろう。民主党から、対米従属勢力が離脱することになるだろう。
民主党の雑居集団で、対米従属勢力と主権者勢力が同居している。このなかで、何よりも重要なことは、主権者勢力の大同団結である。「既得権益を打破する会」は既得権益の中核である米国に従属する政治勢力である。したがって、エセの「既得権益打破」勢力であり、本当の「既得権益打破」勢力が存在感を示さなければならない。
生活・社民・民主の主権者勢力が連帯して、あらたな主権者勢力政党を立ち上げることが必要になる。「みんな」からの江田グループ離脱を、新たな政界再編の契機にしてゆく必要がある。
続きはメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第736号「江田新党が目指す新しい既得権益政党の創設」にて。
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