脱原子力政策大綱の取りまとめを進めている原子力市民委員会は、同大綱に市民の意見を反映させるため、12月8日、福岡市内で意見交換会を開いた。
吉岡斉座長代理(九州大副学長)が「市民の意見を取り入れて、来年4月に同大綱を策定し、国の原子力政策改正へ反映をめざす」として、中間報告の概要を報告。「今の政権が、脱原子力を強力に進める政権となることは無理だが、我々は脱原子力の政権をつくるという決意で、その政権ができれば、脱原発基本法をつくり、脱原発計画をつくる。脱原発政策大綱の骨子が基本計画になり、社会を変えるという意気込みで取り組んでいる」と、同大綱の位置づけを述べた。
原子力市民委員会は、福島第一原発事故を受けて、脱原発社会への具体的道筋の提言などを行なう専門的組織として設立され、原子力政策に関与する政府の原子力委員会などの諸組織に対抗して、脱原発の立場の学者、技術者、市民らが参加している。2014年4月に同大綱をまとめる予定。10月7日に中間報告を発表し、全国各地で市民との意見交換会を開催している。
意見交換会では、(1)福島原発の被害の全容と「人間の復興」、(2)放射性廃棄物の処理・処分、(3)原発ゼロ社会を実現する行程、(4)原子力規制はどうあるべきか――という中間報告の4つの章について、満田夏花(国際環境NGO FoE Japan理事)、吉岡、松原弘直(環境エネルギー政策研究所主席研究員)、滝谷紘一(元原子力技術者、元原子力安全委員会事務局技術参与)の4氏がそれぞれ報告した。
現地からの報告として、「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」の石丸初美代表が、玄海原発の再稼働をめぐる九州電力や佐賀県知事の説明を紹介。「九電も知事も絶対安全とは言いません。『事故は起きるかもしれないけど再稼働はします』というもので、(福島のような事故が起きたら)死ぬかもしれないと宣告されたようなもの。再稼働させないために声を上げていく」と訴えた。
意見交換では、参加者から「福島原発事故を防げなかったという姿勢が必要。(福島では緊急停止できたかもしれないが)安全に停止できなかった場合の危険性を考えるべきだ」、「使用済み核燃料の原発敷地内での中間貯蔵が、(最終処分に)利用されないよう誤解のないまとめ方をしてほしい」、「脱原発に、安全上の問題だけでなく、倫理上の観点が必要」、「脱原発の世論をどう喚起して公論を形成するのか」など活発な提案、疑問が出され、原子力市民委員会側が説明や意見を述べた。
また、原子力市民委員会のメンバー、参加した市民双方から特定秘密保護法が多数与党によって強行成立させられた経過に強い懸念が表明され、「民主主義の崩壊に向かっている気がする」、「原発ゼロという国民の声も無視されるのではないか」、「声を上げ続けるしかない」などの意見が交わされた。
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