台湾を観光する日本人がホテルの情報で最もほしいものとして挙げられるのは、窓の有無、部屋の匂い(古い絨毯やシーツやソファにしみついたタバコのにおい)、カビ臭さ(日本人はにおいに敏感)、ウォシュレット、歯ブラシはまともなものが置いているかどうか(やたらと大きい歯ブラシが置いてあるホテルもあり、その場合は自分で持っていった方がよい)、地下鉄駅から近いか、ビザ、マスターなど大手のクレジットカードが使えるかどうか、読みやすいホテル名かどうかなどだ。また、タクシーに名前を見せた段階で運転手が「わかるかどうか」なども重要である。台湾のあるホテルでは領収書を「手書き」で貰おうとしたら従業員がイヤな顔をしたケースがある。サービスも「現実的にどうなのか?」を示すべきだ。
しかし、旅行ガイドには、「おしゃれな雰囲気」「アットホーム」「朝食付き」などの情報が載っているが、ライター側の字数合わせのような、「おしゃれ」「アットホーム」など漠然とした情報は必要ない。実際、台湾ではホテルに朝食がついている必要は無い。台湾は街の至るところに、安くて美味しい朝食屋が並んでおり、それを「食べること」そのものに台湾旅行の醍醐味があるからだ。「ホテルで朝食をとることはやめて、朝食は『この屋台で食べるべき!』」くらいに踏み込んだ情報の方がありがたい。
日台間交流の顕著な伸びを受け、「ガイドブック」の発行も増えている。しかし、レイアウトを変える程度で、編集部の方針に創意工夫がなく、在住のライターが旧来型の目線で「小物特集」や「鉄道特集」など自身の趣味を紹介している自己満足的なものが少なくない。読者からは「観光に行って、買い物ばかりしないよ!」「鉄道オタクじゃないんだから、鉄道とか駅舎のウンチクばかり盛り込まれても・・・」という不満が上がっている。そして、何よりも観光客にとって必要な情報が記述されていないのだ。
観光客のニーズも刻刻と変わる。「Wi-Fiがどこまで通用するか?」「手続きはどのようにしたらよいのか?」「現地で3G回線を利用するには?」「携帯電話を買ってしまった方がよいのか?」など、「通信」に関する疑問は多い。通信さえ確保できれば、街なかでも様々な情報が手に入るからだ。観光客のニーズを無視して、チャイナドレスや小物、鉄道、古い建物の情報ばかりを入れこんだところで、客のニーズの「最大公約数」と捉えていないことになる。
泥臭くて、商業主義に反するかもしれないが、その中で、ガイドは本当に必要な情報をどこまで提示できるか?「読み手が欲しているものを的確とらえること」こそが、マスメディアの信頼に関わってくるのではないだろうか。自戒の念もこめて。
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