九州電力(本社:福岡市中央区)の資産売却が進んでいる。12月に入り、とうとう九電本社前の「渡辺通駐車場用地」の売却が決まったことが判明した。ホテルモントレなどを展開しているマルイトグループ(大阪市)に約50億円で売却されたと見られている。従業員の賞与支給見送りと併せて、骨身を削る作業が続けられているようだ。
今回売却が判明したのは、同市中央区に九電が所有する駐車場用地。主要な資産として、九電記念体育館などと併せて売却を進めてきたものだ。九州電力の本社ビルの渡辺通りを挟んだ向かい側に当たる。敷地面積は4,300m2。電気料金値上げの際に国に提示した140億円の経営合理化の一環。
九州電力は原発再稼働の見通しが立たないまま、米びつの底を眺めながらの経営を強いられている。原発を稼働させることができれば、一発逆転ホームランとなることが分かっているだけに経営陣はじくじたる思いを抱いていることだろう。しかしながら、原発再稼働を安易に許してしまうわけにはいかない。福島の事故を経験してしまったからだ。それが社会に与える影響、見えない収束への道筋、垂れ流され続ける汚染水と支援金。その解決がなされなくては、原発を動かすことは国益に合致するとは言い難い。
政府はエネルギー政策の重要な柱として、原発を位置づけようとしている。これは茂木経産相が6日に発表したエネルギー基本計画の改定案の方向性で明らかにされたものだ。事実上、民主党が全国規模で聞き取りを行なった末に決めた2030年原発ゼロ政策からの方針転換を表明したと言える。
原発を再稼働するその日までいかにしのぐか、というのが九電の考え方なのかも知れないが、原発再稼働について全国民が納得しているわけではない。核のゴミ問題、賠償のスキームなどが確定し、さらにその先に原発を維持するのか、廃止していくのかなどの大筋が決まらない限り、納得は得られないだろう。
電力会社は原発が動かせないものとして経営方針を考えるべきではなかろうか。そうでなければ、先の見えない霧の中での手探り的経営が続くことになる。骨身が削れるうちはいいが、それもいずれできなくなるだろう。東電から優秀な人材が多く流出していっているとの報道もなされている。このままでは電力会社は内からも外からも崩壊の道をたどってしまいかねない。これまでの路線に頼り続けるか、新たな道を拓いていくか。電力各社はまさに岐路に立たされている。
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