<儲け優先が国家破綻させた戦前の経営者・国民意識>
面白いデータから学んで行こう(下記の資料参照)。狙いは《政治の流れに頓着せずに儲けばかりに走っていると破綻する》という歴史教訓だ。
グラフ線にあるひし形マークは名目国民総支出、長方形マークは実質総支出で単位は10億円である。1929年の大恐慌は昭和恐慌の最悪の事態になる。1936年(昭和6年)が経済のドン底になったが、ここで満州事変が起きる。当時の大蔵大臣・高橋是清の巧みな綱裁きで景気回復は急浮上した。
急浮上のもう1つの要因は満州事変、大陸進行による戦争景気が支えた。1935年には大恐慌以前の水準に戻った。名目国民総支出が1929年、161億円、1935年が165億円である。そして1935年が経済成長の踊り場となった。この年から1940年までは36年の2.26事件に始まって日中戦争が本格化した。この程度の戦争であれば戦争特需・景気によって脳天気でおられる。日中戦争の5年間、国民は長閑な生活を謳歌していたのだ。
数字的にみれば名目国民総支出は鰻登りの増加でまさしくインフレに突入した。だが一方では、実質総支出は35年165億円が4年後の39年には219億円に増加している。32.7%の伸びである。実質総支出が伸びておれば不満も生じない。国民総動員体制のない5年間では、国民の周辺ではまだ戦死者の悲惨な例も目立たない。国民誰もが景気に酔いしれることが可能であった。商売も儲かっていた。
ところが1936年~1945年は、ただひたすら破局の道を疾走した。太平洋戦争を展開するほどの戦争規模になるとそれを支える経済体制は無理が露呈することになる。名目の方はインフレを続け、実質は頭打ちから1945年には破綻の奈落に飛び込む。戦争景気も限度があるということだ。度が過ぎると経済体制、国家体制を破壊尽くすのである。スットプさせようとしても、戦争遂行者ではブレーキを踏むことは駄目である。
1942年7月のミッドウェー海戦の敗北に始まって国民も危機感を感じるようになる。周辺には戦死者が続出、徴兵される人達が急増、爆撃投下までされる始末だ。45年8月15日に敗戦日を迎える。国民たちは胸をなで下ろしホッとする。1935年~1940年の5年間の戦争景気(日中戦争)で束の間の安堵な市民生活をしていた国民には至極、迷惑な話である。儲けることしか眼中になかった商売人もすべての財産を捨てる破目となった。
<70年前の失敗を繰り返すよ!!>
首相・安倍晋三は自分の観念に支えられた国づくりに奔走している。「特定秘密保護法」制定のその先には憲法改正までを射程に置いているのだ。
この逆行する政治の流れに眼をそむけて「アベノミックスで儲かろう」ということばかり考えていたら、70年前の悪夢の再来となる。永遠の商売繁盛を願うのであれば企業家たちも政治に対する意見を明確にすべきだ。「特定機密保護法反対」と意志表明をしたらいかがかな!!ここに「70年前の日本国民の悲惨な体験を忘れるな!!」と警告を発する。
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