次世代のエネルギーとして有望視されている水素エネルギー。燃料電池電気自動車(FCV)のエネルギー源となり、電気でモーターを動かして車を走らせる。ガソリンなどの化石燃料の消費量や、二酸化炭素の排出を減らす有効な一手として期待されている。
トヨタ、ホンダなど自動車メーカーは、2015年に水素エネルギーを活用した燃料電池電気自動車を市場に投入する予定。しかし、水素ステーションの全国的な普及など、燃料電池自動車の普及拡大への課題は多い。
次世代エネルギー実用化に向け、クリアすべき課題は何か?全国19カ所、都内では霞が関、杉並区で水素ステーションの実証実験が行なわれている。
<クリーンな車社会が現実味>
1980年代前半、小学校の理科の実験で水の電気分解をやった。小学生だった記者は、ふと突拍子もないことを考えた。「水を電気分解して、水素を爆発させたときのエネルギーで車を走らせることができるんじゃないか?!」。先生に聞きに行くと、「現実的じゃない。そもそも人間が乗れないじゃないか」と一蹴された。
水の電気分解で車を走らせ、酸素を吐き出すという夢のような車の話は、心のどこかに引っかかっていて、1990年代前半、大学生になった記者は、車に詳しい工学部の友人にこの話をぶつけてみた。「エネルギー効率的には、逆で、酸素と水素を化学反応させて電気を取り出す方なら可能じゃないか」「逆!」「電気で車を走らせる方なら可能だと思う。技術さえあれば」。
時は進んで、2000年代前半。自動車メーカーに就職した大学の後輩と飲みながら、この話をした。「水素電池自動車の開発が始まっていますよ」。
2010年代前半、水素を利用した燃料電池自動車の実用化が、現実味を帯びてきている。トヨタ、ホンダが15年には実用化する見込みで、順調にいけばもう2年後には、水素と酸素を化学反応させて電気を取り出し水を吐き出すクリーンカーが、公道を走ることになる。
ただし、現在のガソリン車と同じように燃料電池電気自動車が走るようになるには、クリアしなければならない課題も少なくない。まず、ガソリンスタンドの役割を果たす水素ステーションの普及が不可欠だ。現在、JX日鉱日石エネルギー、岩谷産業、トヨタ、日産など19の企業、団体によって設立された水素供給・利用技術研究組合が、全国19カ所で水素ステーションの実証実験を行なっている。水素カー時代の到来を見据え、その実現に先手を打って、供給インフラの技術向上に取り組んでいる。
もう間近に迫っている水素元年。果たして、水素カーが今のガソリン車と同じ数だけ公道を走り、排気ガスに代わって水を吐き出す日は来るのか!?
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