<商業ベースに乗るのかどうか>
水素ステーションを普及拡大のフェーズに乗せるには、インフラ整備にかかるコスト削減が不可欠。現在、目標としている200万台の燃料電池電気自動車(FCV)を普及させるとなると、車がスムーズに出入りするために、1ステーションごとに約2,000台となる1,000箇所の水素ステーションが必要となってくる。
現在、水素ステーションの建設、設置にかかる費用は、約5.5億円。FCVが走り始めるであろう2年後には、これを3.6憶円に下げる予定で取り組んでいる。しかし、それでも、ガソリンスタンドに比べると割高。新たなエネルギーを模索する国の政策で、水素ステーションのインフラ整備には、最大で費用の50%の資金援助が受けられる。しかし、普及後は、「利益が出る」構造でなければ、商業的に拡大の上昇カーブを描けない。「1,000カ所のフェーズに乗るまでは、インフラの方は、赤字であってもやる予定」と、水素供給・技術研究組合の北中正宣技術本部長は、水素エネルギーの普及に意気込みを語る。将来的には、民間企業が独自でインフラを建てて、利益が出るところまでいかなくてはならない。建設、運営にかかるコストの削減と、FCVの販売台数の拡大が条件で、水素そのもののコストもガソリンと比較して、安くならなくては、自立的に普及していかない。技術面、コスト面での民間の企業努力が実るかどうか。
<課題は「スムーズな充填」>
ガソリン車では、車がガソリンスタンドに入ってきて、約3~4分で満タンにできる。車両の多い都市部で次から次に車が入ってきたとしても大混雑を起こすことは非常時などを除けば、ほとんどない。FCVによる車社会が実現するには、これと同じことを、水素ステーションでやらなければならない。「3分で5kgの水素を充填する」ことを目標に技術開発が進められている。水素5kgの充填で、500km以上の走行が可能で、これを3分で充填できれば、ガソリンスタンドと比べてもそん色ない。しかし、それを実現するのは、容易ではない。
現在、19カ所で実証実験している水素ステーション。来年には、商用化を見据え、一気に全国100カ所に増やす予定。しかし、利益を出せるようになるまでは、まだ乗り越えるべき壁は多い。
※記事へのご意見はこちら