NET-IBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、米海兵隊普天間基地の名護市辺野古沖への移設をめぐって、辺野古沖の埋立免許の許可へ沖縄県知事に加えられている圧力の数々に触れた12月17日付の記事を紹介する。
沖縄県の仲井真弘多知事が緊急入院した、足から腰にかけて痛みがあるとのことで精密検査が必要であると伝えられている。
原発・憲法・TPP・沖縄・消費税の五大問題のうち、沖縄問題が重大局面を迎えている。
政府は沖縄の負担軽減と言うが、普天間基地を辺野古に移設する場合、沖縄の基地負担率は73.8%が73.1%に変化するだけである。変化するというより、変化しないと表現した方が正しい。
沖縄の面積は日本全体の0.6%しかない。その沖縄に、日本における米軍専用施設の73.8%が集中しているのである。
沖縄県名護市の辺野古海岸はジュゴンも生息する美しい海岸である。沖縄では「美ら海」と表記して「ちゅらうみ」と発音する。この「美ら海」の海岸を破壊して米軍飛行場を新たに建設しようと言うのだ。
安倍政権は辺野古の基地建設を認めなければ普天間飛行場を固定化するとの、一種の脅しをかけている。仲井真知事に辺野古海岸埋め立ての許可を出すよう「強要」しているように見える。
しかし、この手法は基本を根本的に間違えている。何よりも基本の置かれるべきものは、沖縄県民の意思である。沖縄のことは沖縄の人々が決める。当たり前のことだ。
それを、沖縄の人々の意思を無視してものごとを決めようとするから、沖縄独立運動などが生まれてくるのである。
0.6%の面積しかない沖縄に73.8%の負担を強制している現実がおかしいのである。普天間飛行場は住宅密集地に立地する危険極まりない飛行場である。物的な危険性だけでなく、騒音公害も深刻である。大惨事を繰り返さぬうちに、普天間を閉鎖するべきことは当然なのだ。「代替施設が必要」と言うなら、沖縄県以外の選択肢の中から考えればよい。
米国が辺野古基地建設を要求していると言っても、米国は外国なのである。なぜ、沖縄県民が拒絶しているのに、外国の命令に従って辺野古に基地を建設しなければならないのか。ものごとは、基本に忠実に、論理的整合的に考えなければならない。
本年7月21日に実施された参院選で、沖縄では自民党の安里政晃氏と沖縄社会大衆党の糸数慶子氏が一騎打ちの選挙戦が展開された。実質的には、辺野古基地建設を容認する可能性の高い安里氏と辺野古基地建設を断固拒否する糸数氏による、沖縄県民の民意を示す選挙になった。
この選挙で勝利を収めたのは糸数慶子氏である。辺野古基地建設拒絶が沖縄県民の総意として示されたのである。安倍政権は沖縄選挙区を最重点選挙区と位置付けて、安倍晋三氏自身が沖縄に入って安里候補を応援した。それにもかかわらず、沖縄県民は辺野古基地建設拒絶の意思を明示したのである。
沖縄選出の自民党国会議員は、全員が辺野古移設反対を公約に掲げて選挙戦に臨んだにもかかわらず、全員が公約の一方的破棄を表明した。民主主義の冒涜以外の何者でもない。
自民党沖縄県連の翁長政俊会長は公約撤回の責任を取って会長を辞任する意向を示した。
琉球新報は、12月2日付記事で、県連の「県外」公約を事実上撤回させ、辺野古容認をごり押しした、政府・党本部に抗議する意味もある、との見方もあると伝えた。
要するに、安倍政権は米国の命令にただ従うだけの存在なのだ。沖縄の人々のこと、日本のあり方など、基本的に関係ない。米国に右を向けと言われれば右を向き、左を向けと言われれば左を向く。ただ、それだけの行動をしているだけなのだ。
沖縄の人々の意思を無視して、ただひたすら、米国に付き従うというのは、独立国の政府のとる行動ではない。属領の総統の行動でしかない。
沖縄県名護市では年明けの1月に市長選挙が実施される。選挙には辺野古基地建設拒否を主張している現市長の稲嶺進氏以外に、辺野古基地建設容認の考えを示す前市長の島袋吉和氏が立候補の意向を表明している。辺野古の地元市民が基地問題について意思を明示する機会が1月19日に予定されているのである。
その前に沖縄県知事が埋め立て許可申請問題について拙速に結論を示すこと自体がおかしい。
仲井真弘多氏は、安倍政権に何か大きな弱みを握られているのだろうか。
※続きはメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」743号「仲井真知事に辺野古埋立許可を強要する謀略工作」にて。
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