長時間労働などで若者の「使い捨て」が疑われる、いわゆる「ブラック企業」に対して、全国の労働基準監督署が重点監督した結果が12月17日、厚生労働省から発表され、5,111事業場に対して重点監督を実施し、その82%の4,189事業場になんらかの労働基準関係法令違反があったことがわかった。4,189事業場には、是正勧告書を交付した。厚生労働省は9月を「過重労働重点監督月間」と決めて、集中的に重点監督していた。
労働基準監督官は、監督指導などとともに、労働基準法違反の罪について、司法警察官の職務を行ない、逮捕、送検という強力な権限を持つ。日本テレビ系ドラマ「ダンダリン 労働基準監督官」で、労働者を守る官公署・公務員として一躍注目を浴びている。
今回是正勧告した事業場のうち、違法な時間外労働が43.8%、賃金不払いが23.9%を占めた。重点監督時に把握した長時間労働の実態について、対象事業場で1カ月の時間外・休日労働時間が最長の者が80時間超だったのは、1,230カ所。そのうち100時間を超えていたのは730カ所に上った。
指導した事例では、「社員の7割に及ぶ係長職以上の者を『管理監督者』として取り扱い、割増賃金を支払っていなかった」、「営業成績等により基本給を減額していた」、「月100時間を超える時間外労働が行なわれていたにもかかわらず、健康確保措置が講じられていなかった」などがあった。
また、重点監督では、健康障害防止にかかる指導も実施。監督を実施したうち21.9%の1,120事業場に対し、「過重労働による健康障害防止措置が不十分」だとして指導。同23.6%の1,208事業場には、「労働時間の把握方法が不適正」だとして指導した。
厚生労働省は、「法違反を是正しない事業場については、送検も視野に入れて対応する。送検した場合には、企業名等を公表する」として、「今後も引き続き、若者の『使い捨て』が疑われる企業等に対し、監督指導をしっかり行なっていく」と表明している。
福岡県社会保険労務士会では、解雇、賃金、人事、配転、労働契約など労使双方からの相談にお答えする電話相談・対面相談を実施している(総合労働相談室092-414-4864)。社会保険労務士は、労働社会保険法令の専門家(国家資格)であり、労務管理全般のコンサルタント業務や相談業務を行ない、企業の健全な発展と労働者の福祉の向上のために活動している。
▼関連リンク
・厚生労働省「若者『使い捨て』が疑われる企業等への重点監督実施状況」
・福岡県社会保険労務士会
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