NET-IBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回のブログでは、猪瀬直樹東京都知事が辞意を表明すると報道された件を受け、同知事と徳洲会との密着に絡む利害関係を再考し、国民も同知事の発言にウソがあることを見抜き始めていると語る12月19日付の記事を紹介する。未記載部分では、都知事の辞意表明が多方面へ爆発的な連鎖を引き起こす可能性について示している。
猪瀬直樹氏は上昇志向の強い人物である。上昇志向の強い人物の特徴は、ポストとカネに対する執着が強烈であることだ。同種の人物で大臣職を得た者がいた。まだ天の網にかかってはいないが、いずれ捕らわれることになる。要するに「私」を主とするのか、「公」を主とするのかの違いだ。「私」を主にするからさまざまな矛盾が生じる。なぜなら、彼らが付く役職は「公職」だからである。「公職」の立場を「私」の利益に利用するところに矛盾がある。ものごとを破壊する原動力が「矛盾」である。「公」の地位にありながら、「私」の利益を追求する者は、必ず、その矛盾から破滅に進むことになる。
猪瀬氏の職務権限と徳洲会病院の利害は密接に絡む。猪瀬氏が東京都の副知事職にあったとき、医療法人徳洲会グループが東京都内に開設した老人保健施設に、東京都が約7億5千万円の補助金を支出している。徳洲会グループは東京都内に総合病院として東京西徳洲会病院(昭島市)を運営しており、さらに、2012年5月にグループ傘下の特定医療法人「沖縄徳洲会」が老人保健施設「武蔵野徳洲苑」を東京都西東京市に開設した。
武蔵野徳洲苑は、沖縄徳洲会が西東京市に設立を申請し、都が近隣所在の施設数などを考慮して150床を認可し、2010~11年度の2年間に建設された。
そして、その工事額全額の7億4,970万円を補助金として支出したのが東京都である。
そして、猪瀬氏の刑事責任と直結する可能性が高い事案が東電病院売却問題である。猪瀬氏は東京電力の株主総会で、東電病院の早期売却を強く求める発言を行った。これらの行動を受けて東電は東電病院の売却を決めた。この売却に徳洲会が買い手として手を挙げた。
徳洲会の選挙違反問題が表面化してから徳洲会は入札参加を撤回したが、落札企業から購入することも検討されていたようである。
そして、猪瀬氏が都知事選の協力要請に徳洲会の徳田虎雄氏を訪問した際に、東電病院の売却の件が話し合われたとの証言があることが伝えられている。この会話があり、猪瀬氏の株主総会での発言、徳洲会の東電病院売却入札への参加、徳洲会から猪瀬氏への資金提供などをつなぎ合わせれば、収賄の立件が視界に入ってくる。
猪瀬直樹氏はのらりくらりと、都議会での質問をはぐらかし、答弁を二転三転させているが、これで議会を逃げ通せるわけがない。徳洲会側の選挙違反事案に関わった関係者はすでに逮捕され、勾留されている。徳田虎雄氏の次女にあたるスターン三千代氏は、勾留理由開示の裁判で、罪を認めてすべてを供述する考えを示した。猪瀬氏が受領した資金を返済したとしているのは徳田虎雄氏の妻の徳田秀子氏だが、秀子氏も逮捕、勾留されている。猪瀬氏の説明とは異なる供述を示している可能性が高い。
猪瀬氏の発言内容には「ウソ」が含まれていることがすでに明らかになってしまった。ひとつのウソの威力は激烈である。ウソがひとつでもあるなら、すべてのことばの信用力がなくなるのである。
借用書が郵送で返送されたとして、借用書を記者会見で示したが、折り目のまったくない借用書がどのような封筒で送られてきたのかについて問われても、その封筒を示すことができなかった。多くの国民は、猪瀬氏が問題追及を受けてから、急造したものだと推察している。
※続きはメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第744 号「徳洲会事件関連3人の現前知事末路が焦点」にて。
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