16日開催された原告漁業者らと農水省との意見交換会で、長崎県雲仙市の瑞穂漁協の室田一昭さんは、10月にノリ養殖漁期に入って以降、ノリが網で育たない「芽流れ」状態を写真パネルで示した。「今年は1回の入札にも出荷できていない」と訴え、開門(常時開放)を履行するよう迫った。
<開門は有明海再生の最大の課題>
諫早湾干拓事業(1989年着工、2007年完工)は、諫早湾約3,500ヘクタールを潮受け堤防で閉め切って、調整池と農地を造成したものだ。1997年に、当時「ギロチン」と呼ばれた293枚の鋼板が落とされ、諫早湾干拓潮受け堤防によって、諫早湾が閉め切られてから実に16年余になる。
諫早湾は、有明海のわずか2%の面積に過ぎないが、いわば有明海全体の潮流のポンプ役と浄化機能を果たしていた。諫早湾が閉め切られた有明海では、潮流が減少し、海全体に異変が起きた。
現在は、干潮時に調整池の汚染水を排水門から堤防外に排水している。排水門を常時開放すれば、潮の干満にともなって、海水が堤防外と調整池に入ったり出たりを繰り返す。潮流の回復と、調整池とその排水の浄化が期待されている。
2000年のノリ大凶作をきっかけにして、漁業者は、約6,000人、漁船1,600隻という大規模な海上デモなどの抗議行動や、集団訴訟を起こして、開門を求めてきた。
常時開放(開門)は、有明海をよみがえらせる最大の課題としてクローズアップされてきた。
<あなたたちは犯罪者だ>
確定した福岡高裁判決(10年12月)は、防災対策工事などに必要な3年間の猶予期間後、5年間にわたり常時開放するよう国に命じた。漁業者らは、判決から3年間の履行期限を待ち続けていた。
海の異変は、ノリ養殖や魚などの漁船漁業、アサリ漁業、タイラギ潜水漁業などに壊滅的な打撃を与え、漁獲高は最盛期の7分の1に激減、漁業者は生活の糧を失っていった。有明海漁民・市民ネットワークの調べでは、2005年3月までだけで、沿岸漁業者に13件の自殺・自殺未遂が起きている。
意見交換会の最後に、長崎県諫早市の小長井漁協の松永秀則さんは訴えた。
「あなたたちは犯罪者だ。どれだけ漁師や家族が命を絶ったか。人間の気持ちを持ってくれ。あなたたちにも家族がいるだろう。家族が誇れる仕事をしてくれ」。
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