20日、福岡地裁は、中央保育園の園児と保護者の計15人が申し立てた、現・移転予定地への移転禁止と建築禁止などを求める仮処分をいずれも却下した。保護者らはこれを不服とし、来週中にも抗告手続きをとる。中央保育園移転問題は、保育園の移転用地になることを前提として約1.3億円の転売益が発生した土地取引、渋滞の名所である狭隘な前面道路、パチンコ店が隣接しラブホテルが密集する周辺環境など、さまざまな点で問題視されており、保護者らが中心となって移転反対運動が行なわれている。

　今回、保護者らの申し立てに対し、福岡市および中央保育園を運営する（社福）福岡市保育協会（以下、保育協会）は、保護者側が指摘する新保育園の安全性、風俗環境、日照などの問題点について一切反論しなかった。主張したのは、保育の実施期間は単年度ごととし、現在の園児・保護者には、2014年４月１日に開園予定の新・中央保育園について、「新年度のことだから口を挟む権利がない」という内容であった。

　福岡地裁は、市と保育協会側の主張を採らなかったものの、新しい園舎の建築およびその営業は関係なく、現在の場所における営業を終了させる行為こそが園児・保護者の法的権利を侵害すると判断した。園児・保護者側の弁護団は記者会見で、「『移転』という言葉には、現在の保育園の営業をやめるという意味は当然含まれている」と指摘。保育協会に対して、現在の場所における保育園の営業を終了させないことなどを求める、新たな仮処分命令の申し立てを検討しているという。

　記者会見に同席した保護者の代表は、「保護者の気持ちを汲み取っていない」「皆の同意のもと、上告を行なっていく」などと語った。中央保育園移転問題は、このほか、現・移転予定地の土地購入費約９億円がムダだったとして市に損害賠償を求める住民訴訟も行なわれている。また、福岡地検は、移転問題に関する高島宗一郎福岡市長の背任容疑の告発を受理。さらに、高島市政の問題性に気づき、危機感を持った保護者らの市民グループは、高島市長のリコール（解職請求）に向けて準備を進めている（関連リンク参照）。

　中央保育園の現在地を商業利用しようと考えた高島市長は、議会で承認されていた現地建て替え計画の白紙にし、移転・新築へと舵を切った。福岡市のニュースサイト「HUNTER」は、独自の取材で不透明な土地取引の真相をスクープ。それによると、突然の方針変換に慌てた市職員が、地元の不動産業者（株）福住に依頼し、紹介されたのが問題の移転予定地という。福住は、元の地権者には保育園移転のことを隠して７億6,600万円で購入し、８億9,900万円で市に売却したことになる。「待機児童の解消」も後付けで、土地ありきで進められた計画であった。なお、問題の移転予定地については、設計を担当した建築事務所からも問題性を指摘する声があがっていた。

▼関連リンク
・福岡市長リコール市民の会ＨＰ

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