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問われる「西日本新聞」の報道姿勢(前)
社会
2013年12月24日 14:10

 新聞報道の持つ破壊力は、想像以上だ。いったん活字になってしまえば、真相がどうあれ、世間は記事の内容を「真実」だと思い込んでしまう。記事でクロだと書かれれば、実際にはシロであったものがクロになりかねない危険性を有している。マスコミが「諸刃の剣」だと言われるゆえんである。

 つい最近、「?」と首をひねらざるを得ない新聞報道にお目にかかった。それによると、政治家の関連法人が、党の県連幹部側に政治資金を提供、その時期が候補者選考時期に重なっており、怪しいと決め付けた記事だった。いずれも違法性はない。しかも、関係者は、記事が指摘する「疑惑」を完全否定している。にもかかわらず、件の記事は社会面のトップに掲載され、物議を醸すことになった。
 改めて関係者に取材してみたが、取材過程から記事掲載に至るまで、一方的に新聞社側の見立てを押し付けていた構図が浮かび上がってきた。ペンの暴力を検証した。

<問題の記事とは>
今年11月30日、西日本新聞朝刊に掲載された 問題の記事は今年11月30日、西日本新聞朝刊に掲載された。社会面トップには大きな見出しで「自民選考中 パー券購入」、「武田氏側の250万円分」。記事は、衆院福岡3区と4区の自民党内の候補者選考で、対象となった2人に関係する企業と医療法人が、それぞれ平成12年と11年に武田良太衆院議員の関連政治団体が開いた政治資金パーティーでパー券を購入していたことを問題視する内容だった。同紙の記事は、この資金の動きについて、県連内部の人間のコメントとしてリードで「不自然な資金のやりとり」。記事の最後には、県連役員の「選考をめぐる資金のやりとりと疑われても仕方ない。有権者に不信感を持たれかねない」という発言を引用し、不適切だとの見方を示してみせている。さらに、大学院教授の、選考の公正さに疑念を与える金の動きで、有権者を偽る行為だ、などとする話を付記し、記事の狙いである「疑惑の資金提供」に信憑性を持たせたかたちに仕上げていた。

<事実関係は?>
 データ・マックス取材班が確認したところ、福岡3区の候補者選考に名乗りを挙げていた県議の父親が創業した建設会社は平成24年、武田氏が支部長を務める自由民主党福岡県第11選挙区支部主催の政治資金パーティー「武田良太政経セミナー」で150万円分のパーティー券を購入。福岡4区の候補者選考に手を上げていた男性(その後、日本維新の会から衆院議員に当選)が理事長を務める医療法人は、平成23年に東京都内で武田氏の資金管理団体「武田良太政経研究会」が開いた「武田良太政経セミナー」で、100万円分のパー券を購入していた。県議や医療法人理事長が、福岡3・4区の候補者選考の対象者だったことも間違いない(注:西日本新聞の記事では、各パーティーや武田氏の資金管理団体の名称が省かれている)。

<違法性なし 冷めた見方の自民関係者>
 問題は、西日本新聞の記事の一方的な見立て方だ。何らかの意図が働いた可能性さえ感じる。2つのパー券購入に違法性はない。複数の自民県連関係者にあたってみたが、「何が問題なんだ?」「記事に意図的なものを感じる。誰かが書かせたんじゃないか」といった声ばかり。
 ある県連関係者は、次のように話している。
 「(候補者)選考は県連会長1人の意向で決めるものではない。パー券購入と選考を結びつけるのは勝手だが、無理がある。第一、現に、問題とされた2人は選考の結果、選ばれていないんだから。記事には問題がありすぎる。なぜ堂々と県議や医療法人の名前を出さないんだ。これじゃ読者にはわからないだろう。自民の候補者選考が歪んでいる、あるいは密室談合とでも言いたいのか。不信感を持たれかねないと言った県連役員も堂々と名前を明かせばいい。どうせ、現状に不満を持っている少数派のやらせだろう」。

(つづく)
【八女 瞳】

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