台湾を訪れる日本人が、真っ先に行きたがるのが「九份」だ。昼の明るい時間帯に行けば老街の風合いを感じることができ、夕方行けば、橙に変わりゆく空の美しさも堪能できる。どの時間帯に訪れるかで趣が変化する街だ。
台湾北部の山間部に位置する、坂道や階段の多い小さな街、九份。山を背後に海に面した斜面に立つ家々、石段や薄暗い路地など、レトロな風情が溢れる。様々な自然を味わえる立地条件は景観が良く、特に日本人観光客が団体ツアーを利用して挙って訪れる。
地名の由来は、「9セット=9份」から来ている。もともと9戸しかなかった集落が、交通が不便なため、品物を補充する際、毎回9セットを買っていたことから「九份」と呼ばれるようになった。台湾の地名には、「かつての生活習慣」が由来となっているものも多い。映画「千と千尋の神隠し」のモデルになった場所とされ、ジブリ映画ファンも多く訪れている。
台北(忠孝復興駅)からバスを利用して訪れた場合、「旧道」のバス停で下車、観海亭まで歩けば、街の全景と海が見渡せる。キーステーションは、大手チェーンのコンビニエンスストア。そこから、九份のメインストリートとも呼べる基山街が始まる。基山街は南北に延びた活気のある小径で、土産物屋やレストランなどが集まる。幅2~3mほどの狭い小径に土産物屋がひしめき合い、短い時間でオリジナルのものを製造してくれるハンコ屋などが人気だ。基山街の西側に有る石段は九份のクライマックス。石段の中腹には映画「非情夜市」(候孝賢監督)の撮影に使われたレストランがあり、絶好の写真撮影ポイントだ。軽便路にも食堂、みやげ物屋が並ぶ。路地は日本統治時代の古い面影も残す。
九份、食の名物はタロイモと小麦粉を練って団子のようにした『芋圓』で、モチモチした食感が特徴だ。九份にある芋圓店で代表格は頼阿婆芋圓。里芋、サツマイモ、山芋、抹茶、胡麻味がミックスされ、彩りも豊か。紅豆や緑豆のトッピングもできる。
※記事へのご意見はこちら