東京オリンピックの開催が決まり、都心での建設ラッシュが見込まれる建設業界。全国的に好景気の予感に沸く一方で、職人不足の影響がいまだ続いている。施工業者と職人の間を取り持つ中間業者が抱える問題も深刻だ。だが、(株)九州住建代表取締役の笠俊治氏は、「一番守るべきは、現場の最前線に立つ職人の立場」という信条とともに、職人の地位向上を目指している。
<ともに助け合いながら暮らしやすい社会を創る>
業界自体が右肩上がりであることは実感している。だからこそ、利益追求型の旧体制にしがみついたり、私利私欲に走る一部のゼネコンの態度に疑問を感じる。
「私の見立てでは、建設業界が安定するのは10年後だと思います。もちろん、これまでの良くないやり方を改めてこそ、ですが。今までの、弱者泣かせの流れを放置していては、自分で自分の首を絞めるようなもの。業界の明るい未来が見えるからこそ、仕組みを変えたいとも提言もできるのです。次世代型にシフトしていかないと、建設業は視野が狭い業界になり、先細りしていくのではないかと危惧しています」。
そもそも日本人は「変わらない社会」に慣れすぎていないだろうか、と笠社長は疑問を覚える。たとえばカンボジアのような土地で暮らしてみれば、日本人の生活がいかに恵まれているかに気づく。身を脅かされるような何かに遭遇しないと「変える」という方向に意識が向かないのではないか。恵まれた世界をあえて変えたいとは思わないだろう。しかし、同じ地球に住むものとしては、ともに助け合いながら全体で暮らしやすい環境を築く方向へと意識を変えていくのが、これからの社会に暮らすものの役目ではないのか。
今まで低賃金に脅かされてきた職人たちは、今、生活を変えることができると考え始めている。それならば、業界全体を良くするために、変わろうとするものに目線を合わせて努力するのが、上にいるものの務めではないだろうか。
「そういえば、弊社には落ちこぼれ社員がいないんですよ」と笠社長。「実は自分は結構スパルタ式で、叱るときはガッツリ叱るんだけど、誰も反発したり、出社拒否になったりしない。叱る理由を話せばわかってもらえます。叱られて文句を言う社員はいませんよ。それでも誰かが落ちこぼれそうになったら、『俺も大変な思いをしているんだから、お前も頑張れよ!』と、他の社員が引っ張り上げてやるんです。年の差はあるけれど、仲間として遊べるし絆も生じます」。
ともに向上したいという思いは、企業も業界も同じではないのか。自ら職人の経験があり、気持ちがわかる笠社長だからこそ、建設業界の業者や職人がWin-Winで業界を支え合っていく未来を夢見ずにはいられない。
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<COMPANY INFORMATION>
所在地:福岡県糸島市前原東1-6-3
設 立:2002年5月
資本金:1,000万円
TEL:092-332-1231
URL:http://www.q-j-k.co.jp/
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