安倍晋三首相が26日、靖国神社を参拝した。第1次、第2次安倍内閣を通じて、同氏の首相在任中の参拝は初めて。現職首相としては、小泉純一郎氏以来7年ぶり。安倍首相は参拝にあたっての談話で、政権発足から1年を迎えた同日を参拝の日に見定めたことを明らかにしている。中国・韓国など近隣諸国は「人類の良識に対する挑戦」と激しく非難した。靖国神社には、太平洋戦争のA級戦犯がまつられており、日本の侵略を受けた国は、日本の首相・閣僚の参拝に対し激しく反発してきた。領土問題や防空識別圏設置など関係修復の見えない日中関係、日韓関係の悪化が懸念される。
<米側の忠告も耳に入らず>
安倍首相の電撃参拝は、国益を損ねるだけでなく、支離滅裂の次元に突入してきた。特定秘密保護法を強行成立させ、無事国会を閉じた矢先に、ただでさえ緊張状態にある近隣諸国との関係を悪化させる意味が理解できているのだろうか。中国機のスクランブルを契機に不測の事態が起きかねないと懸念される時期に、一触即発を誘発することは絶対に避けなければならない。憲法改正を掲げ、戦前回帰を目指す思想信条はどうあれ、一国の首相が国の進路を誤っては困る。
先の国会開会中、特定秘密保護法を先送りして、靖国参拝を考えているとの情報が永田町を駆けめぐった。米国にとっても歓迎できるものではない。12月3日には、バイデン米副大統領が訪日して安倍首相と会談している。表向きは中国の防空識別圏設定で緊張が高まった日中韓を訪問したことになっているので、その場で米側が「靖国参拝してくれるな、極東の安定が壊れる」とクギを刺したとは言えないが、一触即発の状態に火を付けるような行動は米国が望まないことは明らかだ。米側の意向を受けて、靖国参拝を断念したというのが、永田町関係者の見方だった。
<辺野古承認で舞い上がった?>
靖国参拝の前日には、沖縄県の仲井真弘多知事と会談。「有史以来の予算だ」と知事を興奮させる手土産持参で、頭を下げた安倍首相。沖縄振興予算を2021年まで毎年3,000億円確保するという"札束"で、知事の顔を撫でまわした。懸案だった普天間基地(沖縄県宜野湾市)の辺野古移設へ向けて、辺野古沖埋め立て承認を手中に収めた。
憲法が変わっていないうちから、安倍内閣は「法の秩序」から漂流し始めた。内閣法制局長の首のすげ替えに対して首相を諌めた側近はすでに距離を置いていると言われている。今回の靖国参拝は、"辺野古承認"で舞い上がった結果、側近とも事前に相談せず、電撃でやってのけたのかもしれない。「プチ独裁(ポチ独裁?)」と皮肉を込めて呼ばれてきたが、米国の忠告も聞かず、「ポチ」の首輪を外したとき、"お坊ちゃん2世議員の総理大臣ごっこ"は、制御不能の「独裁」となり、日本を再び破滅に追い込むかもしれない。
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