<新体制は反松尾グループ>
新人事は代表取締役会長・早川慶一郎氏(65歳)・代表取締役社長・宮地文夫氏(69歳)となり松尾氏と世代はあまり変わらない。それには理由がある。2人はそれぞれに以前、ハヤカワコーポレーションの要職にあった。早川氏は総務・管理責任の常務・宮地氏は営業本部長の常務として会社を支えていたのである。早川常務は市郎会長の従弟に当たる。金庫番の役を守った。また社員たちの融和に非常に気配りを行なってきた。一方の宮地営業本部長は全九州のお得意さん回りして高い信用を得ていたのである。2人は松尾社長体制の前半の功労者であったのだ。
それが突然、どうしたことか、忠誠心溢れる2人がそれぞれ5年、6年前に会社を去ったのである。それ以降、2人は悠々自適のシルバー人生を送っていたそうだ。5年前、早川慶一郎氏は60歳であった。奥さんを亡くして失意に暮れていた時期と同じ。辞任すると聞いて筆者は「まだ60歳ではないか。ハヤカワの一族で組織改革の必要があるではないか。その任務がある」などと論じたが、本人の顔には「もう会社から離れたい」一心さがアリアリと浮かんでいたことを忘れられない。
慶一郎氏は早川一族であるから忠誠心で会社防衛に専念しただけではない。根っから「社員のために会社を潰すわけにはいかない」という思いで幹部の裏切りに体を張ったこともあった。また債権回収に奔走する孤軍奮闘する光景も度々、目撃してきた。「これだけの責任感強い男が【会社をサヨナラしたい】と思い詰めるとは松尾社長と対立しているな」と直感した。ハヤカワコーポレーションと少し関与されている人たちならば「会社を去った原因が松尾社長への対立・反目であったこと」と認識していたのである。
今回の新人事体制が発足した指導部には根本的な構造変革が求められている。5年、6年前に早川会長、宮地社長が退任した動機が「松尾社長のやり方では会社が駄目になる」ということであった。解り易く言えば「成果を上げた社員へ正当な評価をして報酬を与える仕組み造り」の構築である。この構造改革の断行を速やかに行なうことが緊急の課題だ。時機は恵まれている。市況環境はグッドタイミングであるからだ。
<時間は残されていない>
だが、しかし、今回の会長・社長二代代表制にも改革に対して悠長に構える余裕はない。2人とも65歳、69歳の年齢である。10年も時間が残されていないのだ。新体制を代表して早川会長がコメントする。「我々も好きで現役復帰したわけではないのだ。現状を鑑みて経営の継承性を考えると我々、2人が繋ぎとして引き受けることにした。日常業務に関しては部長達に権限移譲していく。経験させていけば彼らも経営マネジャーとして育成されていくだろう。5年を目途に新体制に移行していくプログラムも完成させた。外部からの人材スカウトも実行して新時代へのバトンタッチへの役目を速やかに果たす」と。
管材業界の集まりである博水会のメンバーにも取材してみた。「我々のつき合いの顔は松尾氏だけであった。だからどうしようも評論がし難い。早川会長・宮地社長2人には昔は面識があったが、最近はご縁が切れている。現役離れて時間が経たことでの再デビューで簡単に企業を活性化できるか不安を感じる。40代の人材を中心にしたメンバーを結集して組織改革に邁進することが核心だ。ここに成功の条件がすべて凝縮していると思う。生え抜きの優秀な人材は結構、おられることは認識しているからやり方次第だろう。弊社は同族会社だが、経営を支障なくやるには神経を使う。オーナーだからこそ逃げ隠れできない。プレッシャーの圧力も大変だ」と語る。
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