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SNSI中田安彦レポート

【2013年総括】欧州と結びつく中国を尻目にASEANと連携を強化する安倍外交(前)
SNSI中田安彦レポート
2013年12月29日 07:00

SNSI・副島国家戦略研究所 中田安彦

 安倍首相は12月上旬にASEAN諸国との特別首脳会議を開催し、政権発足直後から始まった積極外交の締めくくりを行なった。この際に出された共同声明では、他のアジア諸国の懸念もあり、11月末に中国が定めた東シナ海の防空識別圏に対する批判は避けられたが、一方で1977年、当時の福田赳夫首相がマニラで発表した「福田ドクトリン」で打ち出した「心と心の触れ合う相互関係」の強化を打ち出し、今後も中国を牽制する思惑含みでASEANという「海洋アジア」の諸国との結び付きを強める事を確認した。日本の東南アジア外交といえば元はといえば岸信介が日本の首相としては戦後初の同地域訪問を果たしたことから始まる。

tikyugi.jpg 当時、岸は帰国後、東南アジア開発基金構想をぶちあげた。要するに、東南アジアの復興のためにアメリカなどが資金を供与するという構想であったが、これは一種の「新大東亜共栄圏構想」であろうとも言われた。今回の安倍首相の東南アジア外交もソフトなアジア経済圏を作るという意図があるだろう。大陸に入り込みすぎた反省から海洋アジアを固めつつ、米国とも対立しないという考えだ。なるほど、東南アジアへの日本の影響力浸透をはかるということは、ユーラシア大陸の強国と太平洋を挟んだ米国の間で生きる日本にとっては地政学上も必然的な選択である。

 しかも、現在は日中のナショナリズムが高まっていくなかで中国との相互不信が高まっている。経済的には中国は日本にとっては米国に次ぐ2番目の貿易相手国だが、同時に東南アジアという巨大市場を奪い合う競争相手である。その点においても誰が日本の総理であろうが、このASEANという巨大市場を確保したいと考えるだろう。

 今回、編集部の方からテーマとして「欧州経済の現在」について書いてほしいと言われた。現在の日本において欧州連合は遠い存在になってしまった。ジェトロの統計「日本の貿易相手国TOP50」によれば2012年の段階で日本の貿易相手国(輸出・輸入とも総額)の上位10番以内にユーロ圏の中核国であるドイツが入っている。ただ、輸出先でみると2位の米国と8位のドイツを除いては全てアジア向けである。輸入では資源輸入が多いためにサウジ、UAE、カタールが含まれている。

 現在、欧州経済はリーマン・ショックから5年経ち、マリオ・ドラーギ欧州中央銀行総裁の金融緩和政策が功を奏してか、一応、景気動向的には薄日が差したという状況にある。ロイターは、ドイツ連銀は16日に公表した月報で、2013年第4・四半期と2014年第1・四半期のドイツ経済について、製造業の回復や消費者や企業の業況感改善を背景に力強く成長するとの見通しを示した、と報じている。
 もちろん、欧州連合の内部を細かく見れば、南欧諸国の失業率の悪化、緊縮財政政策によるさらなる景気後退という要素や、ドイツだけが経済的に一人勝ちしていることによる欧州域内不均衡の問題もある。また、欧州の景気動向はやはり新興国ほどではないが、米国の金融政策に左右されるということも否定できない事実である。

(つづく)

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▼関連リンク
・外務省(欧州連合(EU) 概況)
・JETRO(インドネシア)

<プロフィール>
中田 安彦 氏中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。


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