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コダマの核心

企業・人、再生シリーズ(35)~ノンオーナー社長の長期政権の弊害、ハヤカワコーポレーション(4)
コダマの核心
2013年12月30日 07:00

<早川会長が故人になれば松尾体制は終わり>
 さすが闘病生活の早川会長も自分の死期を感じ取るようになった。その時点から会社の行く末を案じるようになった。身内の忠告もあったようだ。「松尾社長体制を放置しておれば大変になる。会社が乗っ取られるかもしれない」と危機感を抱いたのである。この故人の意向を酌んだ身内たちが素早く動いた。そして今回の新体制が誕生したのである。早川親族から早川慶一郎会長・宮地文夫社長ともに「ハヤカワコーポレーションのためにもう一度、尽力いただきたい」と頭を下げられれば断りするわけにはいかない。「了解しました。やりましょう」と返答するしかなかった。

sora_29.jpg 本来は賢明な松尾氏だったはずだ。支えとなっていた早川市郎会長が亡くなった事実を踏まえて「株主でもないのだからこれが身を引くタイミングだ」と判断するものなのだが、それができなかった。「雇われ身なのに19年間も社長に就いていると己をオーナーの身と錯覚するのであろう」と関係者の証言は真理の機微を突いている。「これが人間の慾の業なのか」とも納得する。
 あの気配りに長けていた高塚氏でさえも経営資本が異動した際に、選択を誤った。「俺はダイエー中内氏から再建の任務を命じられた。中内氏がオーナーから身を引いた以上、俺の役目も終わり」という潔い引き際を取れば良かったのである。あの傑物・高塚猛氏が判断ミスをする位だから、松尾氏がミスするのも成り行きであったのか!!仕方がないことだ。それでも、己は雇われ身である。「恩人・早川市郎氏が故人になった時点で自分の役割完了」と判定して欲しかったのだ。

<ハヤカワコーポレーションに学ぶ>
  今回のお家騒動の発生で学ぶものは何か?早川慶一郎会長が指摘する。「70年近い業績のある会社の割には組織ルールを蔑にしてきた。社長規定が何もなされていなかった」と。そうなると(1)社長規定を明確にするルール造りを明確にする必要が緊要の課題になってくる。同社もこの社長職務規定を明確に定めてくるであろう。
 ところがハヤカワコーポレーションの場合の複雑さはオーナー(資本家・株主多数派)に経営後継者対象が限定されていることだ。故早川市郎氏には1人の娘さんしかいない。23歳の娘さんが事業継承者として相応しいかどうかまだ不透明である。相応しいかどうか判定には時間を要する。無理に後継者に祭り上げるとなると社内反発も生じる。同社の難しさは「資本家・オーナーを代表する後継者が当面、存在しない」ということだ。
 (2)【資本(株所有者)と経営の分離】という課題に衝突する。【資本と経営の分離】の面では今回、嫌というほどに苦い経験した。資本側(早川一族)は経営を執行する担当者と間に信頼された包括的取り決めが重要になってくる。何れは株売売却(M&A)も選択の1つになるのかもしれない。
 (3)あとは社内風土の造り替えだ。ハヤカワコーポレーションの得意先に進興設備工業(本社:福岡市南区)がある。この会社の株の大半は金庫株として保管されている。社長の使命は素晴らしい会社を築くことだ(勿論、厳しい数字設定がなされている)。4代目大野社長に方針を聞くと次の社長候補も決定されているそうだ。恐らく、今後、創業一族の血は絶えて社内を含めた他人さまが経営の舵取りをしていくであろう。大野社長のミッションはシンプルだ。「社長在職期間に後輩たちが安心して働ける会社造りをしてバトンタッチをする」と淡々と語る。この淡々とした姿勢は先輩の社長たちが営々と築いた社風なのである。

(了)

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