小室裕一氏は自治省行政局振興課長時代に「平成の大合併」を指揮、その礎を築いた人物である。霞ヶ関を離れた現在、鉄道会社専務という激務の傍ら、軸足を団体自治から住民自治に移し、特定非営利活動法人日本マンガ・アニメトキワ荘フォーラム副理事長など、さまざまな文化活動に参画、地に足のついた地方公共団体の自力再生に尽力している。
<都市機能が分散しているドイツ>
――ドイツに3年滞在されていますが、海外の状況はいかがですか。
小室裕一氏(以下、小室) 大阪市経済局の参事として、ドイツのデュッセルドルフに1989年から3年駐在、ドイツ国内を隅々まで見て回りました。ちょうど、駐在中に西ドイツと東ドイツが合併し(1990年)、再統一が行なわれました
ドイツは、よく知られている話ですが、都市機能が分散、州都にはそれぞれ高い機能が集積、文化施設も充実しています。また、それぞれの州都の産業、大企業、とくに中小企業等はとてもしっかりしています。
さらに、強く印象に残ったことの1つは大学の在り方です。ある地方の大学に視察に行った際のことです。「ノーベル賞学者は輩出していますか」と聞いたところ、その答えは「何人もおります」という返事でした。
――ドイツは噂通り、とてもしっかりとした地方制度になっていますね。大学のお話もとても興味を覚えました。
<大都市と地方都市が支え合い初めて国家が成立>
小室 ドイツではとても多くの大切なことを学びました。しかし、そのまま日本に適用できるわけではありません。日本はシンガポールや香港のように都市国家ではありませんので、後背地もたくさんあります。
大都市は地方都市を支えていかなければなりませんし、その大都市も水やエネルギーや食の面で地方にとてもお世話になっています。1億3,000万人が食べて、生きていくためには、大都市と地方都市が双方で支え合っていくことが大切です。そうなって、初めて国家が成立します。
<プロフィール>
小室 裕一(こむろ・ゆういち)
首都圏新都市鉄道株式会社代表取締役専務、明治大学ガバナンス研究科兼任講師、特定非営利活動法人日本マンガ・アニメトキワ荘フォーラム副理事長、1974年東京大学法学部卒業後、自治省入省。79年群馬県行政管理課長、87年自治省財務局交付税課理事官、89年大阪市経済局参事としてデュッセルドルフ駐在、92年青森県総務部長、96年自治省行政局振興課長、2001年総務大臣官房審議官、05年総務省自治大学校長、総務省自治税務局長等
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