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未来トレンド分析シリーズ

アジアの動向と日本のとるべき道~日本的自由貿易協定の探求(3)
未来トレンド分析シリーズ
2014年1月 5日 07:00

<オバマ政権――輸出主導への転換とアジア太平洋での「米国外し」への焦り>
 リーマン・ショックを受けて登場したオバマ大統領は、個人消費に依存したアメリカの経済構造を大胆に転換し、「2010年から5年間で輸出倍増と新規雇用500万人の方針」を選挙公約として打ち出した。この新たな政策を実現するには、内需主導から輸出主導への大転換が欠かせない。

corn.jpg その鍵を握るのが、急成長を遂げるアジア太平洋地域なのである。この地域との自由貿易協定から阻害されてきたアメリカにとっては、TPPこそが新たな通商戦略の柱と位置づけられたのも不思議ではないだろう。とはいえ、アメリカ政府による「強引過ぎる」と批判されるような交渉姿勢は、他の参加国から反発を呼んでいる。
 実際、アメリカは2013年末までには合意を得ようと働きかけていたが、マレーシアやベトナム等の猛烈な反対もあり、協議は難航し、2014年に持ち越しとなった。新たな目標は「2014年3月の妥結」となっている。すでに4年をかけて話し合いを重ねているが合意に達しないのは、アメリカがアジア諸国の特殊事情を蔑ろにしていることへの反発や、交渉内容を明らかにしようとしない秘密主義の原則が各国の消費者や市民団体の猜疑心を呼んでいることが影響しているようだ。

 その一方で、アメリカや多国籍企業には事前の情報が流されているとの不信感が払拭されていない。実は、日本政府は我が国の国会に対してすら、このTPPの交渉内容については「国際交渉における秘密主義の原則」をタテに明らかにしようとしない。民主主義的な手続きをまったく無視しており、アメリカの議会でも疑問視する声が大きくなっている。とくに貿易上、不利益を被ったと主張する企業が相手国政府を訴えることができる「ISD条項」をめぐっては、アメリカ議会もアジア太平洋諸国の政府も慎重な対応を求める動きが強まっているのが現状だ。

 これまで日中韓、あるいはASEANを含む東アジア地域では、経済の域内統合が進んできた。域内貿易比率はほぼ60%に達し、すでに事実上の経済圏ができ上がっていたと言っても過言ではない。加えて、中国が先導してきた「ASEANプラス3構想」や日本が提唱してきた「ASEANプラス6交渉」など、アジア太平洋地域では自由貿易圏構想が着実に展開していた経緯もある。しかし、いずれの構想にも、アメリカは含まれていなかった。このことがアメリカの焦りをもたらし、オバマ政権下でアメリカ主導のTPP推進が国是となったに違いない。

(つづく)

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<プロフィール>
浜田和幸氏浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。


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