<老舗の塗装会社、技術力は卓越>
野間大池公園の程近く、閑静な住宅街が広がる福岡市南区寺塚に、業界関係者なら誰もが知る塗装会社がある。
川口吹付工業(株)の創業は、戦後間もない1951年。60年を超える業歴に裏打ちされた高い技術力、築き上げた信用力は、新興業者がひしめく塗装業界において群を抜く。その名の通り、塗装工事のなかでも吹付工事を得意とし、実績は公共のインフラから住宅・マンション系まであらゆる分野におよんでいる。
主要取引先に並ぶ優良企業の顔ぶれからも、同社に寄せられる信頼の厚さがうかがえる。積み上げた実績は、工事だけにとどまらない。先代の川口学氏は、日本塗装工業会福岡県支部をはじめとした業界団体の役員を歴任。業界の地位向上と環境改善に力を尽くした人物であった。
学氏が亡くなった後、遺志を継いだのが現代表の川口大介氏だ。技術と信用を守りながら、さらなる実績を積み重ねるべく、ISO9001をいち早く認証取得。諸団体の理事、新時代の塗装業界の在り方を模索する活動を展開している。
<若者に伝えたい技術職としての誇り>
諸団体での活動を通じて、川口代表は、業界の先行きに関わるいくつかの懸念を抱いたという。その1つが、台頭する若い職人たちの「技術」に対する意識であった。
実は、塗装における仕上げの良し悪しは、素人目には判断が難しい。施工直後の見栄えは良くとも、風雨や振動にさらされる塗膜が時とともに姿を変えてしまうからだ。技術の研鑚を怠った新興業者が、業界全体への評価を下げている現実がそこにはある。
技術の軽視は、塗装工事の価格を不当に低いものにしてしまう危険性も孕んでいる。現場の環境に適した塗料の質や塗膜の厚さ、塗りの回数など、良いものを提供するには当然ながらコストがかかり、それこそがプロの仕事への正当な対価である。技術を軽んじた先には、日曜大工レベルでの価格競争しか残されていない。
他方で川口代表は、老舗であるが故の反省も口にする。業界として技術の伝承と技術者の育成に力を注いでこなかったことが、今日の状況を招いたと考えているからだ。月に一度、福岡の若い塗装技術者たちを集めて意見交換会を行なっている。「業界が動かないなら我々から始めよう」――川口代表と危機感を共有する有志らの思いが、賑やかな交流の場で重なりつつある。
将来的には、専門の技術者養成機関を設ける必要性を訴える川口代表。次世代への胎動が、ここ福岡の地で始まっている。
<COMPANY INFORMATION>
川口吹付工業(株)
代 表:川口 大介
所在地:福岡市南区寺塚1-15-1
資本金:1,000万円
TEL:092-511-6933
※記事へのご意見はこちら