小室裕一氏は自治省行政局振興課長時代に「平成の大合併」を指揮、その礎を築いた人物である。霞ヶ関を離れた現在、鉄道会社専務という激務の傍ら、軸足を団体自治から住民自治に移し、特定非営利活動法人日本マンガ・アニメトキワ荘フォーラム副理事長など、さまざまな文化活動に参画、地に足のついた地方公共団体の自力再生に尽力している。
<国の指示待ち、カネ待ちでなく独自の手法を模索>
――最後に、読者でもある企業や団体の幹部および自治体関係者に、エールをいただけますか。
小室裕一氏 国が、各自治体を選択し、直接的に将来ビジョンを指示・提案することも難しくなってくると思います。しかし、人口減少だけが原因ではありませんが、加速される無居住地域の増加・過疎化のなかで、改良・改革していく時間はあまり残されていません。そこで、国は、いくつかの選択肢を提示、自治体に選んでもらうやり方をしていくことになると思います。
その際の判断で大事なことは、それぞれの地方自治体が持つ独自の地域資源を認識できているか否かだと思います。つまり、国の指示待ち、カネ待ちではなく、独自のやり方を打ち出さなければ立ち行かないところまできています。
自治体の方は、単なる事務屋でなく、産学金官のまちづくり、地域づくりの先頭に立って頑張ってほしいと思います。先進的な自治体では、すでに、20年先、30年先をシミュレーションし、選択と集中を実行しています。
一方、地方都市で生活されておられる方は、今こそ頑張りどきだと思います。今、全国の若者の間で、秋葉原等を中心に、現在50代、60代の方々には想像もつかない、従来の1次産業、2次産業、3次産業の枠を超えた産業が生まれています。そして、彼らは世界で堂々と勝負しています。
これは地域再生のヒントの1つになります。従来のように、公共投資待ちとか製造業の誘致等にこだわり続けていては大きな前進はありません。
――本日はありがとうございました。
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<プロフィール>
小室 裕一(こむろ・ゆういち)
首都圏新都市鉄道株式会社代表取締役専務、明治大学ガバナンス研究科兼任講師、特定非営利活動法人日本マンガ・アニメトキワ荘フォーラム副理事長、1974年東京大学法学部卒業後、自治省入省。79年群馬県行政管理課長、87年自治省財務局交付税課理事官、89年大阪市経済局参事としてデュッセルドルフ駐在、92年青森県総務部長、96年自治省行政局振興課長、2001年総務大臣官房審議官、05年総務省自治大学校長、総務省自治税務局長等
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