「2013年は、ここ数年のなかで今年が一番悪かった」という声が有名クラブからもあがっていた中洲。「今んところ、景気のよかとは株屋さんぐらいですね。『ちょこっと前と違って、今は自信ばもって勧めることのできる銘柄が多い』って聞くけど、全体的には福岡はまだまだのようですね」(中洲クラブ経営者)と、アベノミクスもどこ吹く風といった感じだった。
しかし、中洲も秋頃から持ち直したようで、景気が地方に伝播するには時間がかかるということかもしれないが、「8月に売上がゼロという日もあって、正直、店をたたもうかと悩んだけど、9月から良くなってきました。消費税の増税へ向けて、駆け込み需要のしわ寄せがあったようにも感じます」と、某スナックの店長は分析する。中洲の飲みはしばらく辛抱して、家や車といった高い買い物が優先されたという。1回の飲みで遣う金額も平均的に下がっていたそうだ。
ともかく年末になって、胸をなでおろしている中洲関係者は少なくはなかった。そして年が明けて、最近では、キャバクラやクラブの女の子のギャラが高騰しているという話を聞いた。キャバクラA店の店長によると、「時給が平均7,000~8,000円に上がった店があります」という。A店はセット料金が安く、時給は基本4,000円ぐらい。同業の高時給の店へ人が流れるのは仕方がないが、これまでは、高時給も一時的なもので、結局、出戻りというケースもあった。ただし、最近の背景には好景気がある様子。女の子ギャラの源は客の飲み代だが、「宵越しの銭は持たない」と言わんばかりに景気よくパーっと遣う客が増えているということかもしれない。
時給7,000円で午後8時から午前1時までの5時間働いたとすれば日給3万5,000円。それに指名やドリンクのバックも入ってくるので、少なくとも4万円にはなるだろう。時給4,000円の店でも7,000円はもらう娘がいるが、店がそれだけ出しても儲かるくらい営業成績があるからこそ。客の立場から考えれば、お手頃価格店で人気がある娘と基本時給が同じ他店の娘では、接客の質が同じとは限らない。
景気が悪ければ、貴重なお小遣いで飲んでいるお父さんも多く、接客の悪さがクレームに発展することも多い。最悪の場合、値段に関係なく「ぼったくり」と言われる。懐に余裕があれば、その店に不満があっても「じゃあ、もう1軒」という選択肢も出てくるだろう。しかし、店側がそこに甘んじれば、ただの景気便乗商売である。小生としては、今も昔も変わらぬ料金で頑張っているところこそ、西日本一の歓楽街・中洲の高い接客の質を守ってきた店としてお勧めしたい。
<プロフィール>
長丘 萬月 (ながおか まんげつ)
福岡県生まれ。海上自衛隊、雑誌編集業を経て2009年フリーに転身。危険をいとわず、体を張った取材で蓄積したデータをもとに、働くお父さんたちの「歓楽街の安全・安心な歩き方」をサポート。これまで国内・海外問わず、年間400人以上、10年間で4,000人の風俗関係者を『取材』。現在は、ホーム・タウンである中洲に"ほぼ毎日"出没している。
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