NET-IBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回、1月8日付けのブログには、安倍政権の誕生後、露骨な利権誘導が生じていることを指摘、現在の日本で憂慮すべきは「人材不足」であることが記されている。未公開部分では永野護氏著の『敗戦真相記』からの引用を踏まえ、過去、人材不足が引き起こした悲劇をまた繰り返すのではという危機感を募らせている。
1月19日の沖縄県名護市長選。安倍政権にとっては、この選挙が最大の試金石になる。
現職の名護市長は稲嶺進氏。辺野古基地建設阻止を掲げて当選を果たした。2010年のことだ。鳩山政権が発足して、沖縄に、これ以上、基地を作らせないことが目指された。普天間の辺野古移設阻止は、沖縄県民の総意である。これは、いまもまったく変わっていない。
仲井真弘多知事は、沖縄の負担軽減のために、辺野古海岸埋め立て申請を承認したと強弁するが、こんな主張が通用するわけがない。仲井真氏は安倍首相と会談して、普天間の5年以内の閉鎖の確約を得たのか。日米地位協定廃止の確約を得たのか。
何も得ていないではないか。
安倍政権から命令されて、県民との約束を一方的にかなぐり捨てて、政権に尻尾を振っているだけに過ぎない。もはや知事の座に留まるべきでない。沖縄県民は早く、仲井真弘多氏をリコールによって辞職に追い込むべきである。
安倍政権が誕生して、露骨な利益誘導が展開されている。安倍政権は名護市で激しい実弾戦術を展開していると見られる。札束でほおを叩いて、基地建設を認めさせようというのだ。これで名護市民が基地建設推進派候補を当選させるなら、日本全体が唖然とするだろう。
安倍政権はこの問題に対する情報操作工作を拡大させている。インターネット上の大手ポータルサイトには、辺野古埋め立て申請承認問題が大きく取り上げられ、コメント欄が設定されている。ネット上の世論調査も実施されているが、いずれも、埋め立て申請承認を是認する声が太宗を占めている。政府が巨額の資金を投下して、ネット上の工作員を大量動員しているのだと考えられる。
ところが、沖縄の地元紙である琉球新報などを見れば、こうした情報操作された状況が、沖縄県民の皮膚感覚とまったく異なっていることは歴然としている。沖縄県民はいまこそ、怒りを爆発させるべき局面である。名護市民は基地反対の主張についての矜持を問われることになる。
そして、2月9日には、東京都知事選が実施される。安倍首相が提示した3条件は、絶対に負けないこと、行政経験があること、できれば女性、であるが、優先順位は、一番目の「絶対に負けないこと」にある。
自民党が実施した世論調査では、舛添要一氏が第一位であり、自民党はこの調査結果を最重視している。民主党は独自候補の擁立を断念して舛添支持に相乗りする姿勢を強め始めている。
この情勢下で東国原英夫氏が出馬しても、勝算は現時点では高くない。細い松の枝新党(細野・松野・江田新党)が創設され、その候補者として東国原氏が立候補する可能性は存在するが、新党設立構想は頓挫している。
舛添、宇都宮、田母神での選挙になるなら、やる前から勝負はついている。何の争点もなくなってしまう。この方向に事態は急速に傾いている。
だが、だからと言って安倍政権が安泰ということにはならない。すでに記述したように、安倍晋三氏のおひざ元である山口県で、3月にも知事選が実施される可能性が高まっているのだ。自民党が支援した山本繁太郎知事が昨年10月から長期入院しており、執務を行えない状況が続いているのだ。山本氏は近く辞意を表明するとの情報も流れ始めている。
山口県で知事選が実施されることになる。原発問題が最重要争点になる。さらに、石川県では3月16日に知事選が実施されるが、現職の谷本正憲知事は6選を目指して出馬する見込みだ。知事の多選批判が唱えられるなかで、6選に向けて出馬し、それを阻止できない状況が生じている。
日本のもっとも深刻な現実は、人材の枯渇である。永野護氏が著した『敗戦真相記』(バジリコ)なる書がある。「立ち読み電子図書館」に次のように紹介されている。
元日本商工会議所会頭である永野重雄らを輩出した「永野兄弟」の長兄で岸信介内閣で運輸大臣を務めた永野護。その彼が敗戦翌月、廃墟となった広島で行った講演に、さらに加筆して修正し、翌昭和21年元旦に発行したのが、この「敗戦真相記」である。
※続きはメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第757号「出来レース化する都知事選と山口・石川知事選」で。
▼関連リンク
・植草一秀の『知られざる真実』
※記事へのご意見はこちら