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【特別対談】福岡からアジアへ、高まる企業の進出熱(中)
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2014年1月10日 07:00
一般社団法人九州経済連合会 国際ビジネス推進室(IBC)室長 新田敏之氏
公益社団法人福岡貿易会 専務理事 甲斐敏洋氏

 ――さまざまな取り組みを行なっているようですね。海外視察の歴史も長いと聞きますが。

 甲斐敏洋氏 甲斐 1963年には全国に先駆けて、韓国へ視察団を出しました。台湾、中国各地、東南アジア、欧米。そして今後はブラジルやロシア、イスラエルなど1歩先を見据えた視察を心がけています。
 チャイナプラスワンが叫ばれ始め、タイとベトナムへの企業進出は瞬く間に進みました。では、その次がどこになるのか。そこでカンボジア、ラオス、ミャンマーの勉強会を始めたのが2007年です。これがインドシナ半島研究会です。9カ月間の勉強会は非常に実りのあるものになりました。仕上げにミッションを組み、カンボジアとラオスを訪問しました。まずプノンペンに入ったのですが、韓国資本の流入に圧倒され、日本企業進出へ不安がよぎりました。その後、ラオスに入り、現地を視察するなかで幾度も日本の原風景を見たのです。川に裸で飛び込み泳ぐ子どもたち。電気のないなかでも、楽しそうに暮らす家族。昔の日本の風景を思い出しました。

 ――それが福岡・ラオス友好協会設立のきっかけなのですね。

 甲斐 その通りです。ビジネスではカンボジアの方がチャンスは大きい。しかし、心を打ったのはラオスでした。そこで福岡貿易会のメンバーが中心となり、10年に福岡・ラオス友好協会を設立しました。現在、法人会員は約50社、個人会員が80名ほどで、ラオス政府の要人や九州で学ぶラオス人留学生を招いて、定期的に交流会を開催しています。
 今、最も悩んでいるのが、ビジネスや文化の交流の軸になる人物がいないこと。カンボジアでいう大谷さんのような存在がいれば、もっと活動が盛んになるはずなんですが...。協会でも、「本当に交流だけでいいのか」という声が上がっています。その役目を担ってくれそうなのが、福岡県出身の飯田夫妻。ラオスでケーキをつくったり、小豆を栽培したりしています。これに合わせて、日本の若者をラオスの農業に送り込みたいと考えています。
 先を行くカンボジアのビジネス交流を参考に、今後もラオスを中心にインドシナ半島の経済発展、日本とのビジネス交流を促進していきたいと考えています。そして、ベトナムやミャンマーを含めた友好協会が点で存在するのではなく、それぞれがつながり、面でインドシナ半島を捉えられるように交流していくことも必要なことだと考えています。

 大谷 ビジネスセミナーにアドバイザーで参加するのですが、参加企業からの質問が非常に具体的になってきました。それだけ真剣に進出を検討しているからでしょう。カンボジアは農業国ですが、現状では一期作しか行なわれていません。共通の課題である農業改革でラオスと連携できればいいですね。

 ――友好協会といえば、以前は名誉職のようなかたちで設立されていましたが、少なくともインドシナに関しては、ビジネスと一体した民間交流が進められています。とはいえ、他国の海外進出と比べるとまだまだ迫力が足りません。

 甲斐 福岡はアジアのゲートウェイと言われて久しいですが、言葉だけが踊って実質がともなっていませんでした。その間に、シンガポールでは漁村が大都市に変わり、釜山の港湾整備、上海の空港周辺の変わりようはすさまじい。スケールもスピードも違います。
 それでも東日本大震災以降、福岡の立ち位置は大きく変わりました。日本の拠点港を海外に拡大していかないといけない。そういう意味で、福岡には地の利があります。

新田敏之氏 新田 これまでIBCへの相談には、カンボジアやラオスの案件はありません。それでも九州の強みである水資源、環境分野、農業分野を組み合わせて、複数社で進出できれば理想的だと思います。そのためには現地のニーズを分析して、それに合わせられるかが重要です。カンボジアやラオスであれば、ODAやJICAに関わる案件も多いはずです。しかし、今はまだ現地の情報が少なく、ニーズを汲み上げきれていません。ぜひ皆さんと情報を交換させていただいて、IBCとしても提案型の支援体制をつくっていきたいと思います。そして成功案件を増やして、波及させていきたいです。

(つづく)
【文・構成:東城 洋平】

≪ (前) | (後) ≫

一般社団法人 九州経済連合会 国際ビジネス推進室(IBC)
 将来的な九州の内需縮小を受け、アジアの成長力を取り込むことを背景に2012年7月に開設。母体となる九経連の会員は大手企業が中心だが、IBCは九州全域の中小企業の海外ビジネス展開を支援することで、九州経済を活性化させることを目的とする。九経連の会員約960社の海外ネットワークを活用し、現地パートナー企業や海外工業団地を紹介。海外政府・経済団体と積極的にMOUを結ぶなど、信頼性の高いネットワークを持つ。また、企業単独では実現の難しい小ロット商品をコンテナに混載し、九州ブランド産品の輸出の支援のほか、通関手続きや販路開拓のバックアップも行なう。
 取組事例としては、13年春に香港で九州産農産物の展示即売を開催。九州産ブランドとして売り込むことで、窓口を一本化でき、輸入業者からも評判を集めた。農産品を集めて大量輸出することでコストを低減することもできるメリットもある。入口から出口まで、プロジェクト方式で成功事例を1つずつ積み重ねている。発足から約1年半の間に、130件を超える支援依頼があった。
所在地:福岡市中央区渡辺通2-1-82 電気ビル共創館6F
TEL:092-761-4262

公益社団法人 福岡貿易会
 1958年に設立された「福岡貿易振興会」が前身。日本が貿易政策として輸出振興による経済発展を目指していた高度成長期に、福岡市および周辺経済圏の貿易関連企業が協力し設立された。その後、73年に「福岡貿易会」と改称し、翌年の74年の法人化を経て「社団法人 福岡貿易会」となった。そして、2013年4月に「公益社団法人 福岡貿易会」に移行している。97年には、福岡市のアジアの交流拠点都市づくりに呼応し、アジア経済交流センターを開設。国際ビジネス情報の窓口となり、地場企業の人材育成支援に取り組んでいる。09年には、中国での地場企業の販路拡大、進出を支援するため上海事務所を設置。
 主な事業は、貿易情報および貿易資料の提供、貿易に関する講演会・懇談会・説明会等の開催、 海外視察団の派遣など。会員数は約300社。63年に、全国に先駆けて韓国へ視察団を派遣。その後、台湾、中国各地、東南アジア、欧米などにも派遣し、現地情報を収集、発信している。また、タイとベトナムに続くチャイナプラスワンを研究するため、07年にインドシナ半島研究会を発足。それをきっかけに会員を中心に10年「福岡・ラオス友好協会」を設立。ラオス人留学生などを招いて、交流会を開催、ラオスの情報を定期的に会員に届けている。
所在地:福岡市博多区博多駅前2-9-28 福岡商工会議所ビル7F
TEL:092-452-0707


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