<遅れている「健康増進のための予防医学」>
医学の果たす役割は大きく分けて2つある。1つは「病気を治す医療」である。人間ドックも病気を早く見つけて治療するので、この領域に含まれる。2つ目は「健康増進のための予防医学」である。今はとくに悪いところはないが、元気に末永く活動的に過ごしていくための医学的支援だ。この第2の領域は、日本は非常に遅れており、実施している医療機関も少ない。
小山嵩夫氏は、東京都中央区銀座に女性の健康管理を目的としたクリニックを開業している医師(生殖内分泌学・抗加齢医学)である。更年期前後から元気に生きるための啓発活動を行ない、NPO法人更年期と加齢のヘルスケア理事長と一般社団法人日本サプリメント学会の理事長をしている。
健康増進が目的の場合は、日頃の運動、食事、生活環境の見直しなどが中心となり、口から入れるものとなると、サプリメントや漢方ぐらいである。病気ではないので、薬は逆に有害と言える。
本書は、遺伝子リスクはサプリメントで回避(序章)~自分の遺伝子を知るメリット~意外と知らないサプリの世界~サプリメント効果を得るためのルール~誰も教えてくれなかったサプリメントの真実~ドクター厳選!先手必勝サプリメント(5章)で構成されている。
<女優・男優による誇大広告・宣伝で購入>
サプリメントを常用している、または過去に常用したことがある人は、60歳以上の高齢者を中心に、国民の6割を超えた。ところが日本では、サプリメントなどの健康食品は「食品」に位置づけられ、「特定保健用食品(トクホ)」と認定されたもの以外は、機能性(効果・効能)の表示は認められていない。巷に溢れる健康情報を頼りに、自分自身で調べるしかないが、その作業はとても大変である。
厚労省や消費者庁が今進めている改革「新・機能性表示制度」でも、この種の不安を完全に拭いさることはできない。サプリメントの業界は玉石混交のため、結果的に、国民の多くが科学的根拠のない女優・男優による誇大広告・宣伝に振り回されて購入してしまうのである。
<この世で、唯一無二のあなたの遺伝子!>
著者はこのような環境のなかで、賢いサプリ選びをする1つの方法として「遺伝子を調べて選ぶサプリメント」を提案している。遺伝子検査というと、遺伝性の病気を調べるための特殊な検査というイメージがあるが、現在では、体質に合わせた薬を処方したり、将来なりやすい病気を調べて予防したり、より高いレベルの健康を手に入れるための検査として注目されている。
巷にあふれる健康情報はあくまでも「万人向け」であり、また、機能性表示制度がどんなに改善されても、あなたとまったく同じ遺伝的特徴を持つ人は、この世であなた1人しかいない。そのため、たとえ他の大多数の人の健康に良いものであっても、あなたの健康に良いとは限らないのである。
<一生に1度だけでいい、お得な検査>
本書には、ドクターズサプリメント(医師が患者に処方するサプリメント)の話を中心に、自分にピッタリのサプリメントや健康法を見つけて、より上質な健康を手に入れるヒントが満載になっている。
小山氏は「遺伝子検査は一生に1度受けるだけで、それ以後の健康の指針になる非常にお得な検査」と語る。
「あなたという生命体」の設計図を見れば、将来なりやすい病気のリスクだけでなく、あなたの遺伝的な体質の弱点や強みなど、あなたがより健康に生きるためのヒントが得られる。糖代謝が弱い、酸化ストレスに弱いといった体質的な特徴などがわかれば、巷にあふれる情報に右往左往することなく、より適切なサプリメント選びができることになるかもしれない。
<プロフィール>
三好 老師(みよしろうし)
ジャーナリスト、コラムニスト。専門は、社会人教育、学校教育問題。日中文化にも造詣が深く、在日中国人のキャリア事情に精通。日中の新聞、雑誌に執筆、講演、座談会などマルチに活動中。
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