中国南部の島・海南島は、今や押しも押されもせぬ中国のリゾート地だ。国内のみならず、海外からも多くのリゾート客が押し寄せる。島は中国で最も新しい「海南省」。省都となる北側の海口と南側の三亜が主要都市だが、熱帯気候の三亜の方が「リゾート色」が強い。

　経済が活発化するも発展途上だった海南島を一躍、人気リゾート地に押し上げたのが、映画である。「非诚无扰（フェイチェンウーラオ）」には「狙った恋の落とし方」という意味不明な邦題がついているが、中華圏でここ数年来でトップクラスのヒットを飛ばした作品で、「インターネットを通じて発生する恋愛」をテーマにしている。2008年に中国大陸をはじめ香港、台湾などアジア圏を中心に公開されたものの、日本では「映画祭」での上映に留まった。

　主演は、北京出身の俳優・葛優（クー・ヨー）、台湾出身の女優・舒淇（スー・チー）で、脇役として台湾出身のビビアン・スーらも出演している。葛優と舒淇は中華圏では共にトップクラスの人気、さらに、実績のある馮小剛が監督を務めたとあって、ヒットは「堅い」ところだったようだ。作品のロケ地となったのが、前半部分が海南島、後半が北海道。海南島で２人が知り合い、リゾート地も存分に盛り込まれ、後半は北海道へ旅行・・・。

　恩恵を受けたのは海南島だけではなく、実は、北海道にも大きな影響をもたらした。映画を見た中国人観光客は海南島のみならず、挙って北海道（ロケの中心は釧路市や厚岸町）を訪れた。日本では公開されなかったため、北海道の宿泊施設の関係者は「映画の影響」ということを知らず、「急に中国人が来るようになった」ということだけを、なんとなくしか感じていなかったのだ。それでも、北海道、特に釧路地方への中国人の旅行は増え、2009年には釧路空港へ国際チャーター便が増えたり、中国人資本家による北海道の土地購入が増加したりもした。

　海南島は、もともと流刑地の代名詞、最果ての地として「見離された」土地だった。しかし、1984年に経済特区に指定され、1988年には海南省として独立。インフラも整備するなど、流刑地が一転、「リゾート」へと生まれ変わった。シェラトンやヒルトンなど外資系のホテルも次々と進出。2013年末には、ドバイなどで展開している大型高級リゾート「アトランティス」が三亜への進出を発表した。海南島には「ここが中国!?」と思えるほどに洗練された欧米式の空間が次々と誕生している。

　食は、海鮮料理中心で、ヤギやアヒルを食材として使った料理が有名だ。福岡発では、広州経由三亜（中国南方航空）、台北経由三亜（中華航空）などがある。「香港や台湾は行ったことがある」という方は、日本人にはまだ馴染みの薄い「海南島」を訪れてみてはいかがだろうか。中華圏でありながら、中華圏と違った雰囲気をきっと味わうことができるに違いない。

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