普天間基地移設問題と沖縄振興のあり方が焦点となる沖縄県名護市長選挙(12日告示)で、現職で2期目に挑戦する稲嶺進市長(68)の陣営は8日夜、総決起大会を開き、会場の21世紀の森屋内運動場には主催者発表で3,800人余が集まった。
<仲井真知事の決断を痛烈に批判>
稲嶺市長は、普天間基地を同市辺野古に移設する計画に対し「辺野古の海にも陸にも新しい基地を造らせないという約束、信念を貫いてきた。公約通りしっかり貫いていく」とあらためて表明。仲井真弘多知事が辺野古埋め立てを承認して、移設問題を名護市長選の争点に押し付けたのは「責任転嫁だ」と述べ、「知事は名護市民を見捨てたのか」と痛烈に批判した。
沖縄振興予算と引き換えに知事が辺野古埋め立てを承認したことを「ウチナーンチュ(沖縄県民)はそこまで卑屈になる必要があるのか。沖縄の自立は遠のいた」と指摘。「(米軍基地再編で新たな基地負担を受け入れた自治体に配分される)再編交付金に頼らない街づくりを実証してきた」として、保育所増や保育料減免、中学卒業までの入院通院への医療費助成、財政健全化、入札制度の改善など、4年間の実績を紹介した。「再編交付金をもらったときでも目が届かなかった、手が差し伸べられなかった分野にきめ細かく対応してきた」と力説した。
決起大会には、推薦する社民党、共産党、生活の党、沖縄社会大衆党の4国会議員、県議、市議らが出席し、代表らが次々に決意を表明。大田昌秀元知事も応援に立ち、「辺野古の海にも陸にも造らせないというのは正しい判断で、全面的に支援する」と訴えた。県内有数の経済人や元自民党県連顧問ら保守の有力者が応援に駆けつけて挨拶すると、会場は大きな拍手と指笛で沸いた。俳優の菅原文太氏が応援メッセージを寄せ、「辺野古はもちろん、沖縄の土地も海も、ここに住む人たちのものだということを、稲嶺さんを当選させ、日本中、世界中に発信していこう」と読み上げられた。
<自然とともに生きる沖縄らしい平和産業を>
「観光は平和産業です。辺野古受け入れは、リゾート地、楽園の放棄になる」と訴えたのは、かりゆしグループの平良朝敬CEOだ。同グループは、沖縄かりゆしリゾート・オーシャンスパなど県内で5つのホテルを経営する。平良氏は、今の辺野古埋め立て計画がV字型滑走路や、空母が接岸できる機能を持つ「アジア最大の軍事基地の要塞だ」と述べて、「先人たちがひもじい思いをしながら、命を賭けてたたかって守ってきた沖縄の土地、自然を破壊させてはいけない」と表明。「稲嶺市長に1つお願いがある。キャンプ・シュワブの全面返還だ。625万坪の広大な土地が返還された楽園と、辺野古移設により未来永劫に軍事要塞化される岬とは天国と地獄の差がある。子々孫々まで夢を貫く行動をしよう」と呼びかけた。
元自民党県連顧問の仲里利信・元県会議長は、自民党県連や同党の県選出国会議員が「県外移設」の公約を撤回し辺野古移設を容認したのに抗議し、自民党を離党し顧問を辞任した。「県内移設は戦争につながる。戦争を体験した私として、あのような思いを子や孫にさせたくない」と訴えた。
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